【芝居】「M.O.S.ヤングタウン」かるがも団地
2023.6.17 18:00 [CoRich]
かるがも団地の新作。前売りが早々に完売になり、当日券キャンセル待ちで潜り込みました。 八王子・南大沢を舞台に暮らす人々の物語。105分。6月18日までSPACE EDGE。配信は7月18日まで。配信終了に向けての動画も十分に戦略的です。
多摩ニュータウンの南大沢。中一の女子はこの街を抜け出したい。同じように抜け出したい小学校の同級生と一緒に抜け出すべく都立を受験したが、二人とも落ちてしまい、同級生は学校に行けなくなってしまう。
その兄は中二で、生徒会の独裁が許せない。生徒会長は製薬会社社長、ニュータウンの中の一戸建ての友人ばかりを優遇している。
この街の大学生は中学校の頃引っ越してきて馴染めなかったが、ここ街の大学で建築を学び、団地のデザインを考えている。
生まれ育った場所は早々には抜けられないし、中学生ともなれば学校の中のコミュニティ、あるいは前からの友だちとの関係が変化していって、いろいろジェットコースターのように感じる日々、という瑞々しさを丁寧に紡ぎます。同じ地区の中にいわゆる団地、一戸建て、分譲、賃貸が区画に分かれているのが多摩ニュータウンの特徴で、その地区の間を車道が分断し、歩行者はその上を立体交差で動けるという、あの時の計画の素晴らしさがキチンと実現されている場所。しかし、それは結果的に、ある程度の貧(という程ではないにせよ)富の差が明確に可視化されてしまい、子供たちですら、それを感じながら育っているという残酷な感じでもあって。
主役となる中学校一年生、この場所を抜け出したいという一緒に都立中を落ちた友だちの設定が絶妙で、幼いうちに挫折を経験して耐えられるか耐えられないかという、それぞれのパーソナリティではあるのだけれど、そのコントラストを繊細に描く骨格が実に見事なのです。その外側で起きる兄の(生徒会に対する)反体制の気持ちとか、強大な(生徒会という)独裁体制を続けるために後輩に生徒会長になって貰うべく、「替え玉無料券」を配ったりするという買収活動など、なりふり構わない大人の政治家たちの相似形を描きつつ、これはそれぞれの生徒たちが暮らしている場所の威信を賭けた戦いなのだという重ね合わせという相似形を丁寧に重ね合わせて、奥行きのある物語の空間をきちんと作り出すのです。
同じ場所に大学(都立大・南大沢キャンパス)があり、街のことを考えている建築学の学生を設定しているのは絶妙で、この街に図書館やコミュニティを作り出すという、卒制ゆえの純粋なこの街の発展を願うという気持ちが、街の未来を見ているよう。
セットはカラフルな積木を団地や家に見立てた感じがニュータウンらしく、もう一つ若い役者ゆえに昇ることも出来るイントレで高さ方向の空間の埋め方が見事なのです。ポロシャツの右胸に付けた数字が学年なんだというくだらなさも楽しい。
やる気がなさそうな英語科教員を演じた大西薫の振り幅が良くて、終盤でしかし生徒を絶対に守るというセリフにちょっと涙ぐむワタシです。母親やラーメン屋店主を演じた長井健一はコミカルな役がとてもよいけれど、元無線部員としては無線部の扱いがあまりにも、とは思いますが大きな問題ではありません。とはいえ、看板は宮野風紗音だなぁと思います。(顔を覚えられながちなワタシだからかもですがw)
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