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2023.07.09

【芝居】「ホテル・ミラクル The Final(S)」feblabo×シアターミラクルP

2023.06.11 18:00 [CoRich]

閉館を迎えた歌舞伎町・シアターミラクルの最終公演、人気シリーズを2バージョンで。まずは「STAY」バージョン。6月20日までシアターミラクル。

いろいろ注意事項など「ホンバンの前に」
同級生の男女、男は童貞が卒業できそうで浮かれ、女は手慣れた感じだが、元カレは暴力的だし、そもそもこの部屋に二人で入った経緯は覚えてないし、財布も携帯もなくしていて。「THE WORLD IS YONCHAN's」(新作, 河村慎也)
女性お笑いコンビの一人が、彼女のファンでもある後輩のピン芸人の男がホテルの一室に呼び出されている。男はなにかあるかと浮かれているが、女にはその気はなく、解散が決まったので久々にネタを書こうとしているのだと打ち明ける。相方を呼び出し、ネタを書き切ると宣言し、恋人は相方にしないのだというが、男は相方にも恋人にもなりたくて悶々とする「噛痕と飛べ」(新作, 加糖熱量)
不倫の二人、男は絶倫で女もいい雰囲気で関係を続けているが、実は女は娘一人いるものの、かつて堕胎していて、今回も妊娠して堕ろすことを決めている。女の携帯に電話がかかってくる。男の妻から。「愛(がない)と平和 -Bagism by Love&Peace.-」(ホテルミラクル3, 古川貴義)
女子高生とあしながおじさんという関係で続けている。女は声優になりたくて金を貯めているが、コンビニでもバイトしてたりする。男は女を撮った写真を東京していたりする。声優よりは芸能人になれるといいうが。「スーパーアニマル」(ホテル・ミラクル, ハセガワアユム)
女子高生と花火師を名乗る男がホテルの一室。地球に危機が迫っていて、その地響きも聞こえてくる。綿密に決められた避難計画はあって、それでも逃げない人もいるし、この二人も逃げる気は無い。唐突なフラッシュバックの数々。「最後の奇蹟」(ホテル・ミラクル6, フジタタイセイ)

「〜YONCHAN's」は、手慣れた風の女と浮かれる童貞男の同級生カップルのコメディかと思えばさにあらず、二人でここに入った経緯も覚えてないミステリー風味を経て、二人とも失神させられた上でここに運び込まれたという、女の元カレによるイジメの結果という陰湿極まりない絶望。しかし、互いに助けようという気持ち、弱虫でも立ち向かおうと決心する男。結果がどうなったかはわからないけれど、短編の映画の前半のようなキャッチーでくるくると変わる展開に目が離せない感じ。

「噛痕〜」は、女性お笑いコンビ解散を考えていて、久しぶりにネタを書こうと決めた女が、ファンでもある後輩の男とホテルの一室、男は浮かれるが女にその気はないけどネタ書きの監視役のため、このホテルで両親がセックスしたから自分が生まれたことを聞いていたからこのラブホテルという設定のやや無理矢理感はあれど、ゆるい権力勾配はありつつも軽口たたき合う二人の信頼感のある会話の語り口は軽快で楽しい。
このお笑いコンビは実は女性同士の同性愛カップルで、前説パート「ホンバン〜」と繋がり、別れを決めた故の解散、だから「恋人を相方にはしない」という決心。男は下心一杯で(しかし暴力的に襲うことはせず、それは同じ業界の先輩後輩、ファンでもある敬意が絶妙に効いてる)恋人にはなりたいし、しかし芽が出ないピン芸人として相方にはなりたし、という焦燥感。何かが解決するわけでは無いけれど、二人で笑い合い、飛び跳ね服を脱ぎ始め踊るラストはひたすら眩しいのです。

「愛(がない)と〜」はだいぶ歳を重ねた不倫カップル。互いの配偶者には踏み込まないまま続けている大人の関係が続いてきたけれど、女が堕胎したことを隠していたから続いていることでもあるというのは初演にあったかどうか覚えてないワタシですが、もしかしたらアップデートされているのかもしれません。まるでAVのように欲望にまみれたラストカットは強烈な印象を残すけれど、性的な相性と愛情が必ずしも一致しないという微妙さを持ち合わせ互いに認めている二人の会話は業のようであり、通奏低音のように響きます。

「〜アニマル」は夢のある女子高生と、それを応援すると嘯くあしながおじさん。金で女を撮りラブホテルに二人きりというやや露悪的な関係。女は声優になりたいというのに出役になるべきだという男に対して、「有名になった自分をテレビや映画で見かけて育てたと思いたい」のだと論破する女の痛快さ、というか多かれ少なかれ小劇場に通うと芽生える気持ちを言い当てられて、ちょっと恥ずかしかったりも。

「最後の〜」は、危機迫る地球の一室、地響きも聞こえてくるなか。綿密な避難計画があっても逃げない二人。ホテルミラクルのこれまでのさまざまなシーンをフラッシュバックさせる唐突感はあるけれど、何本もシリーズを見てきたワタシには感慨深く、ある種の走馬燈で、この劇場とこのシリーズの名残惜しさを象徴的に。

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