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2023.07.24

【芝居】「ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-」チョコレートケーキ

2023.07.01 19:00 [CoRich]

骨太な歴史物を得意とするチョコレートケーキの新機軸(なのかな)。ウルトラマンのような特撮を作る人々を描く125分。7月16日までシアタートラム、そのあと愛知メニコンシアター(7/29-30)、まつもと市民芸術館(8/5)。

ドラマの脚本から外され、新たに子供向けの特撮作品の脚本を任された男。「ユーバーマン」の第2シリーズが終わり、平成に新シリーズが作られるまでの空白の期間にオマージュというかパクリで企画されたワンダーマン。赤字が続き予算の削減を云われている。男は工業地帯の河原を舞台にイジメをうける少年の物語を差別をベースに描く事を決める。

史実であるウルトラマン、たとえばNHKの「ふたりのウルトラマン」や、実在の特撮エピソード「怪獣使いと少年」(帰ってきたウルトラマン)、「ノンマルトの使者」(ウルトラセブン)といった、いわゆる子供向け番組なのに大人にも訴えかける弱者への視点をもった物語をつくった人々を描きます。ウルトラマンを作った彼ら自身が差別される側の当事者であったのとは異なり、今作ではそれまで気にしていなかった若い作家が、さまざまな差別の存在に気付いて「勉強して」描く形を取ります。そのなかで「橋の向こう側の友だちと遊んではいけない」であったり、大阪の下町で育ちごく身近なものであったことなど、さまざまな「証言」を折り込み、それをフィクションに昇華する人物を描くのです。

差別する側される側といった当事者を劇中劇に留め、芝居の中心としては描かず、距離感を持って描くことで、物語の持つインパクトは弱くなった感じはするのだけれど、放映を躊躇する「大人の論理」と戦う姿を描くことで、差別を温存し連鎖する現実、無自覚にそれに加担する側になっていることを折り込みつつ、差別からはどこか遠いところに居ると感じているワタシにも、考え続けるべきなのだと突きつけるのです。

手慣れた歴史の史実の隙間というよりは現実に着想したフィクションを、より現代に近い舞台でポップに描く、劇団としては珍しい一歩で、こなれていない感じがするといえばそうなのだけど、ワタシは(題材はともかく、描き方としては)ポップなこんな感じの彼らをもう少し観てみたい、という気はするのです。

なんせワタシ、ウルトラマンドンピシャの世代、その当時はもちろん大人の視点など知る由も無いけれど、こういうものを作り出す熱い人々の物語は素直に喜んじゃうのです。伝説のシリーズであったユーバーマンの系譜が一時的に途切れた時期に同じ作り手たちが、オマージュ(パクリ)として別の企画として作り出した、なんてあたりがちょっと熱いと感じるワタシです。

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