2023.06.11 14:00
[CoRich]
実は毎年続けているラフカット、最近は飛び飛びになりがちなワタシ
(1997,
2004,
2005,
2006,
2009,
2015)。
6月11日まで、スペースゼロ。
ヤクザの事務所に半裸の男二人、デリヘルの女二人、組員たち。若い組員の父親はかつて、厳格な野球審判で厳しすぎる判定で世間を騒がせ、妻が自死してしまう、がその自分の父親が目の前で半裸で縛られている。「愚かなる人」(太田善也, 2015)
コインランドリーに集う人々、「コインランドリーマンズ」(桑原裕子, 2005,2017)
台風から3年、防災公園を兼ねたふれあいパークが作られるが、テナント出店も振るわないなか、かつてやんちゃだった男は反省してラーメン屋を続けている。かつてボランティアで訪れていた男女はそのあと付き合い、男が勤める会社がスポンサーとなっていたが、打ち切りが決まる。ラーメン屋の妻はボランティアだった若い女が色目を遣っていると感じていて穏やかではない。同じ女をみかけた引きこもりだった男は希望を感じて外に出るようになり、プレゼントをしようとするが断られる。「ダンスフロアに華やかな光」(堤泰之)
地方の旅館、就活中の大学生がアルバイトしている、訪れる金持ちのカップル客の男はそのアルバイトに声を掛けて採用をもちかけるが、翌朝、女は婚約指輪がないと騒ぎになり、従業員たちを疑う。「パーはチョキより弱いのか」(2007, 2018)
「愚か〜」はあからさまに出落ちの半裸の男、チャイナドレス、ヤクザなどわかりやすく記号化された登場人物の見やすさ。物語の軸となるのは、ヤクザの下っ端としてデリヘル嬢の通報で捕まえてみれば、半裸で縛られるプレイしているカタブツの父親だったという起点から、殺し屋や刑事が紛れ込んでいることがわかって疑われたり混乱したりを経て、息子を逃がそうとする父親の想いに着地するのです。いい話なのに半裸で居続ける父親がいることで、通奏低音のようにベースにクスクスが続くエンタメらしい楽しさ。父を演じた川崎誠一郎はずっとそうあり続けるテンション。実際のところ、出演する役者に合わせてキャラクタを変えられる役が多くていろいろと変化させて行けそうに感じるワタシです。
「コインランドリー〜」は既に2回も上演しているという、この企画のマスターピースのひとつ(ワタシは一つしか観てないけれど)。
まあまあ大量の物語を細かくつぎ込むのはどこかグランドホテル形式風。
元アメフト選手だけど会社員になった男、かつての元カノの姉(この絶妙な距離)から知らされる元カノの結婚。
妻に逃げられその追憶のように柔軟剤の匂いを探し続ける男。
コインランドリーに来てるのにまったく洗濯をしたことがなさそうなスーツ女と、出て行ったヒモの男。
彼女を連れてきて洗濯するでもなくテーブルがあるからここでコンビニで買ってきたケーキで彼女の誕生日祝いにしようとするバンド男。
左遷が決まり泥酔した課長と同僚たち。
いくつもを細かく組みあわせつつ、「名前の無い家事」が存在していることを自覚することを二組の男女に性別を違えて語らせたり、会社員がバンド男に云う上から目線にカチンときたり、泥酔したあまり勝手にギターを弾いた課長がまあまあ格好良かったり。日常のアップデートに芽を配りつつ、一人の人物だって格好良かったり格好悪かったり、いいところも悪いところも併せ持つ人物の造形がそれぞれの役に課されてて、こちらも若い役者でさまざまにバリエーションが作れそう。泥酔した課長を演じた経塚祐弘の判りやすい酔っ払いとカッコイイ瞬間、本気で悔しがるバンド男を演じた妹尾竜弥の若者っぽさ、怒りながらもファミレスに誘い出す齊藤由佳の可愛らしさが眩しい。
「ダンスフロア〜」は災害のあと、税金をつぎ込んで作ったはいいけど数年で維持が難しくなっている防災公園、イマドキらしくテナントを入れるがそれも困難を極めていて、出店者の思いだけで続いている限界感。災害時のボランティア、そこから繋がった公園に対してのスポンサー契約。あるいは外からの若い女性というだけでのぼせ上がったりするラーメン屋店主。スポンサー契約の打ち切りの中で吹き出す、店主の妻の不満、同じ若い女性に希望を見いだし一歩を踏み出す不器用な男。全体としては抱える本音を出せる相手と出せない人々を細かく描きだして、引きこもり男がフラれても店を出そうと踏み出す一歩、な些細な未来。
「パーは〜」もまた三演めだけれど、ワタシは初見。古い旅館、だらだらと働く従業員たち、なんか似つかわしくない金持ち客。就活中の男はこの客に目をかけられ、就職が目前だけれど、指輪の「盗難事件」によってあぶり出される、従業員たちそれぞれのバックグランド。
あるいは金持ちのカップル客でも女を見下している男、あるいは彼らが見下す従業員たちという抗いづらい格差がどんどん明らかに。
旅館なのに時々紛れ込むルンペンもしくは裸の大将風の男がかき混ぜつつも、この「盗難事件」を解決するのはとても強引でスピーディで実は楽しかったりするワタシです。ここで見える、誤りは誤りとしてきちんと謝らせようとする従業員と、素直に謝る金持ち客の男、本当は当たり前なのに、「謝ったら死ぬ」ぐらいに考えている人がホントに多い私たちの世界というか為政者への絶望を感じたりもするのです(そんなに大きい話じゃないか)。年上のストリッパーと恋仲になっている大学生という取り合わせの昭和な感じも楽しい。
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