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2023.06.07

【芝居】「独り芝居『月夜のファウスト』/前芝居『阿呆劇・注文の多い地下室』」串田企画

2023.5.20 18:00 [CoRich]

まつもと市民芸術館の芸術監督を退任した串田和美の新たな一歩。3年間で39公演を数えるライフワークとも云えるファウストの一人芝居版は初見(1)に、盟友・真那胡敬二と息子・串田十二夜による前芝居を添えて。20分ほどの前芝居+休憩+125分ほどの一人芝居。

地下室に入り、懐中電灯で照らして探る二人組。「1966->1996」と書かれている壁をみつけたり。前芝居『阿呆劇・注文の多い地下室』
ファウストは40年の寿命を得たが、昼も夜も無く欲望を体験した20年目、40年分だと告げられ焦る。あるいは、地主の娘を見た吉祥寺の風景、航空機の化粧室の照明がついたとき現れる鏡の向こうの誰かとか。独り芝居『月夜のファウスト』

説明無しで始まる「注文の多い地下室」。男二人で暗闇で話したり、あるいは位置が変わっていることが暗闇でもわかる(音像ともいうし、盲者の視点とも感じられる)序盤。やがて、そこに懐中電灯をつけて明るくなる感じ。実際のところ、後半の一人芝居で語られる、串田和美の劇場の場所の話だということは気付かなかったワタシです。とはいえ、親子ぐらいに年代の違う男二人のコミカルな会話が実に楽しく。

休憩を経ての後半、串田和美は休憩中の雑談という雰囲気で語り始めます。この場所がかつて自身の劇場・六本木自由劇場だったこと、劇場を閉じたあとに通りかかり、地下におりてみた体験は前芝居の謎解きでもあるし、戦後に住んだ吉祥寺の風景や航空機の化粧室で自身を鏡でみて感じたことだったりは、一人芝居に織り交ぜて、ファウストの物語と、恐らくは串田和美自身の体験の語りがないまぜになっていく不思議な感覚。唐突に切り替わるけれど、いろいろなルール、たとえば太鼓やベルで場面を切り替えるということを織り交ぜて馴染ませていく、奥行きのある舞台がそこに出現するのです。

時間に縛られ不自由だと決め、もうオシマイだと思うことを物語ながら、しかし愚かな人間にしか見られない夢は、これからも観ようじゃないか、今日はここまで、という結びは、まだまだ先へ、芝居を作っていこう、というある種血気盛んな若者のようなパワーがそこにあるのです。

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