【芝居】「夢見る無職透明」螺旋階段
2023.5.28 13:00 [CoRich]
螺旋階段の新作。120分弱。5月28日まで、神奈川県立青少年センター・スタジオHIKARI。
理不尽に解雇された中年の男は途方に暮れて夕方まで寝床にいる生活をしている。ある日夢をみたのは、新人の頃に先輩に連れられ通っていたスナックでの出来事だった。交通事故に合いそうになった若いホステスと入れあげる常連客、ガタイのいい若者を連れたサングラス姿の男、毎日のように通う未亡人だという女、あの頃のままに見える。若いホステスが怪我をしたと運び込まれてきて。
理不尽にクビになった中年サラリーマンを起点に、時間軸を行き来しながら大きく3+1のパートで描かれます。わりとネタバレですが
間にクビを宣告した上司との会話を挟みながら。
1) 若いホステスが事故にあい運び込まれ傷物になったといい求婚してくるが、なぜかおでんのチクワをエンゲージリングとか。ガタイのいい男が持ち込んだカバンの中の白い粉を見つけて打たれてしまう。
2) だいたいの流れは同じ、事故に遭うのはママだけどそのあと偶然若いホステスが怪我をして、一つ目のあれこれを教訓にして周到に同じにならないようにして求婚を受け入れたりして、ヤケに常連のエロいオヤジがエスカレートしたり、踊ったり。
3) 上司が新人だった男を初めてこの店に連れてきた日。ここまでの伏線を回収するかのように、求婚とかカバンの粉は近所の蕎麦屋の大将と店員が持ち込んでたりとか。
4) 男の家が火事になり家財を失うが、スーツ姿で就職活動を始める。女たちはしたたかだし、人々は集まるし、乾杯する。
理不尽なクビ、家に引きこもってみていたであろう白日夢はまるでこれまでの走馬燈、辻褄合わなくたって、印象的なシーンだけを編集したようなのはなるほど、夢だから。しかし、コレまでを精算して、次の一歩を踏み出す力強い物語。中年オヤジの汚さが混じってたりと、会場名称の「青少年」向けかはわからないけれど、人生はいろいろあるしレジリエンス(の力)は持っていた方がいいというのは少年、心のどっかに持っていた方がいいよとは思うほどにはオジサンのワタシ。
上司が新人を連れてきた日のシーンが実に良くて、未来には明るいことしかないと信じられたあの瞬間の眩しさ、店全体を包む幸せなさ、「スナックのいい女は幻で、ボトルの数だけ愛を返してくれる」なんて巧すぎるじゃないかと思ったりしつつ、泣きそうになるワタシです。
未亡人の常連客を演じた岡本みゆきはこの劇団のほぼ常連になりつつありますが、ある種観察者のような視点で居続ける人物をきちんと。クビになった中年男を演じた根本健の弾けたり挫けたりの振り幅。金払いのいい常連客を演じた露木幹也はここに来てまさかのエロオヤジな造型(初めて見た気がする)けど、ありそうな説得力。住安会じつは町内会会長を演じた新井人志の人なつっこさ、子分じゃ無くて店員を演じた須藤旭のガタイの良さが惚れ惚れするほど印象的な立ち姿。ママを演じた田代真佐美のパラパラの切れっぷり、若いホステスを演じた木村衣織の看板という説得力。上司を演じた緑慎一郎じつはいい人みたいな役、作家だからね。そこは自在に。
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