【芝居】「チキン南蛮の夜」くによし組
2023.5.21 14:00 [CoRich]
新作と再演を組み合わせて上演。ワタシは未見の2018年初演作の再演を。65分。21日までOFF OFFシアター。
チキン南蛮を吐いて過食嘔吐癖を持ってしまった女。吐かれたチキン南蛮は地縛霊となり女を見守っている。地元を離れ友だちもいない女はラジオ、インコと話しかける相手らしきものを手に入れるが、嘔吐まで真似されインコに手を上げ、インコは姿を消してしまう。同じ頃初めての彼氏が家を訪れるようになるが、金目当てだったりやがて別れる。再び一人となり何も口に出来なくなった女を、戻って来たインコは心配する。
若い一人暮らし、友だちいないけれど会話したい欲の目一杯、だれかと繋がりたいこと、あるいは彼氏を失いたくなくて依存しまくること、失って錯乱したり、いっぽうで手に入れたはずのインコとの生活を苛つきで手を上げてしまうこと。見ていて不安になるほどの不安定さめいっぱいの人物で、文字通り食事も喉を通らなかったりというメンタルの脆弱なのだけれど、あくまでコメディであり、SF風味でもありちゃんとフィクションとして娯楽に昇華する凄みがあります。
地縛霊は語り手でありツッコミであり、インコはボケまくってる感じで、女を中心に見守るような暖かさ。それはクズな彼氏をきっちりヒールとして描く形にもなっています。後半では、地縛霊が「触れば入れ替わる」というSFを少々唐突に持ち込み収束に向かいます。外形的には彼氏とヨリを戻し幸せに暮らしているように見えるけれど。 見守り続けていたのが嘔吐されたチキン南蛮しかいないというのもそうだけれど、不器用に生きる人がこの混沌と混乱のループの中から抜け出す奇跡を求めたい気持ちを描き出す作家の切実なのだと思うのです。もっとも、本人がそうか、とは判らないけれど、すくなくともそう考えてるのだろう、という意味で。
女を演じた小野寺ずるは切実なのにコミカルに、時に騒がしくも、この混沌の中でしかし生き続ける人物をきっちり。地縛霊を演じた 大見祥太郎はフィクション目一杯の存在なのに、温かく見守り続ける姿。インコを演じた渋谷裕輝の何を考えてるか判らない感、時におびえが見えたりする瞬間がなんか楽しい。彼氏を演じた永井一信の優しくしかしクズっぷりのなんか妙にリアリティ。
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