【芝居】「Please just a minute」劇団スクランブル
2023.4.29 14:00 [CoRich]
横浜の劇団・スクランブルの新作。95分。30日まで神奈川県立青少年センター・スタジオHIKARI。
公演が近づく稽古場。なかなかメンバーや小道具が揃わなかったり、演出が定まらなかったり、まだ立ち稽古を一度もやっていない役者がいる。出演予定だった子役の降板が決まり大御所俳優は代役探しを請け負って連れてくる。遅れてきた主演女優は突然降板を申し出る。
ショーが始まる前の稽古場のマストゴーオンな物語だけれど、終幕に向かって加速する混乱。病気による降板、代役のあれこれや座組の中での恋愛のドロドロなど偶発的な要素はあるけれど、結局のところは立派なことを言う作演が細かな段取りや小道具、グッズの準備や稽古場の準備などをすべて役者を兼ねた演出助手にぶん投げていることに起因していて、その不条理さが積み重なる現場の姿、コメディではあるしもちろん大笑いするけれど、良く考えると終幕は実際のところ何も解決しない地獄絵図、苦しさで気持ちがチクチクするワタシです。 「ショー・マスト・ゴー・オンなんかくそくらえ」「こんな状態で上演するなんて最低だ」なセリフの幕切れは、もちろん痛快さはなくて、シニカルのバランスが本当に微妙というか絶妙というか、客を選ぶ気はするけれど、「最高の暇つぶし」を標榜する劇団らしいといえばらしい。
演出助手を演じた中根道治、全てを押しつけられる理不尽に負けないまま続ける抑圧の末の幕切れの凄み。全てを押しつける側の作演を演じた竹内もみはヒールと言えばヒールなんだけど、人垂らしそのもの、という説得力。安請け合いしがちでセリフが覚えられない大物俳優を演じた中山朋文は見栄を張る絶妙なコミカルさが楽しい。妻を演じた岡本みゆき、実は夫が本当に好きという造型が可愛らしく。降板したい女優を演じた江花実里の不満持つ素と、役に入ったときの振り幅が凄い。
当日パンフに混ぜて織り込まれていたのは、劇中稽古をしている芝居の公演チラシ。ちゃんとしたカラーオフセット印刷(たぶんw)でホンモノと見紛うばかりだけれど、地名など絶妙に嘘を折込み、役者の交代も取り消し線でやってたり、twitterアカウントまで(公演終了後に、作演はパリで遊んでるしw)。細かいことだけれど、スタッフ名もわりと書いてあるのに、劇中こんなに仕事を押し付けられてひどい目にあう演出助手のクレジットがそもそもないというひどい扱いの物語から地続きのリアリティがすごい。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「業界~恥ずかしながら、ボクらがこの世をダメにしてます~」Tom's collection(2025.03.22)
- 【芝居】「ズベズダ」パラドックス定数(2025.03.20)
- 【芝居】「夜明けのジルバ」トローチ(2025.03.08)
- 【芝居】「ユアちゃんママとバウムクーヘン」iaku(2025.03.01)
- 【芝居】「なにもない空間」劇団チリ(2025.02.27)
コメント