2023.3.19 19:00
[CoRich]
mu主宰のハセガワアユムによる演劇セレクト・視点によるイベント。全部は行けなかったけれど、二コマだけの二つめ。3月19日まで座・高円寺1。120分ほど。
明治には廃刀令が出されず、公式の場には帯刀が当然とされている日本。戦後は女性も手にできるようになっている。相次ぐ殺傷事件を受けて廃刀令の議論が盛んになって、両方の意見を戦わせるタウンミーティングが開かれている。日本人の心だという主張の男、刀を持つべきではないが国に廃刀を決められることに納得がいかない作家、刀剣業界の広報担当者、かつて刀で人を傷つけたが更正し講演会を続ける男、フェミニズム派のジャーナリスト、もの作りの観点で新しい刀剣を提案する技術者、刀より鎖鎌だという男、区長選を狙う元区議。「令和5年の廃刀令(杉並区会場)」(アガリスクエンターテイメント)※このあと4月末に墨田区、5月頭に豊島区あり。
100万円が欲しい市井の人々にインタビューをして、100万円配っているお金配りオジサン。五組の人々。地下アイドルのチケット買い占めをしたいシングルマザー、サブカル個人書店の起業に失敗した男、YouTubeで一時的に人気にはなったが妻が出て行ったことで更新がとまる理髪師の男、前に貰った100万円で借家を勝手に防音工事して借主の同棲相手に叱られ修繕費を狙う男、意識高く副業農家と自販機で稼ごうとする男。「変な穴(2003)」MU (
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「〜廃刀令」は「議論の場」を得意とするあがりすくアガリスクの新作。劇場を変えて都内三区を巡る公演の最初の開催地として。廃刀令が明治に出なかった架空の日本を舞台に。日本人の心とか業界のありかたとかのいかにも刀剣を巡る議論や、持たない女性が性被害に遭うことが多いという別の視点だったり、スマート刀剣なるもはや刀剣という形だけで武器としての意味を取り去ってしまうものまで、カオスともいっていいほどのさまざまをギュッと一つに。結論を導き出す議論の過程というよりは、対立する人々のズレ、噛み合わなさとか、意見を押し切るための無理筋などを大量に積み重ねていくことでコメディとして描くというのが作家の持ち味。
「Suicaとモバイルバッテリーとスマートウオッチの機能を併せ持つスマート刀剣」なるものを登場させています。それは技術による解決の糸口という科学技術の期待というよりは、武器としての機能をそぎ落として、邪魔になる大きなものを持たせる意味を後付けするように何の議論をしてるかを無効化させるよう。議論としての面白さというよりは、大喜利になってしまう感じでコメディとして押し切るのかと思いきや、終盤、公務員で中立を求められる司会者がそれでも語り始める、議論の発端となった児童無差別殺人の被害者との距離の近いウエットな語り口で、舞台の雰囲気を導いてるという感じではあるのです。
「変な穴」は同じタイトルの2011年作を換骨奪胎、と銘打って。大金を持つ主人とドレーなる人々をめぐる無駄な浪費を続ける人々を描いた初演とは確かに随分雰囲気が違います。SNSを通じて大金を配る男とそれに群がる人、という距離感になっていて、更には終盤でその男すらも雇われている舞台俳優で、それも解雇されると相対化してみせて、確かな視点など何もないのだ、と嘯いてみせるよう。
正直に云えば、金持ちの男(を演じた男)がともかく露悪的で空虚の「穴埋め」なのだと読み解こうとしても、なかなか乗り切れなかったワタシです。作家によるライナーノーツによれば、「関係が無い」ことをひたすら描き、「いじわるな気持ち」が積まれていくのだというのは、まさにその意図にすっぽりとハマったのです。喫煙室での会話、関係の無いものがふれ合うことが一縷の望みなんだというのは、なるほど。こんなライナーノーツも含めてが、作家の持ち味。
8団体を2つずつ、4グループに分けての上演なのは、シャッフル形態とことなり重ならずみやすい感じではあるけれど、平日だけの上演団体とか、週末祝日を含めたステージががある団体とかの偏りがあって、週末観劇者のワタシには当然コンプリートは難しく、なんとかならんかな、と思ったりも
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