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2023.03.19

【芝居】「日記」カリンカ

2023.2.26 18:30 [CoRich]

劇団普通の石黒麻衣による外部のユニット・カリンカへの書き下ろし新作。OFF OFFシアター。105分。(わりと15分ずつきっちりエピソード。組み替えられそうでもある。)

遠くに住む両親を通い介護していた妻は、便利な自分のマンションに両親を呼び寄せる。車はないが駅チカで狭いなかのやりくり。高価なマットレスを買ったり自分たちは狭い部屋で寝起きするようしたり、さまざま準備をして、気を遣って暮らし、夫の親や姉夫婦との関係でちょっと違和感があるようなないような感じをしながら、しかし大事件は起こらないまま、2ヶ月経って両親はもとの実家に戻ってしまうまでの期間を細やかに描きます。

作家が主宰する劇団で2022年4月上演した「秘密」は倒れた年老いた両親の通い介護する人々を描いた前作から茨木弁の会話劇でもあり繋がるような感じなのだけど、登場人物も役者も全く異なる別の物語。介護そのものを描いているわけではないけれど、老いていく両親、会話の微妙さ、悪意も邪心もないけれど、なんかズレを感じ違和感を感じることなど、「どこにでもある」親と子供の物語ということでもあると思うのです。

若い人々の日常の目線で描かれることの多い小劇場だけれど、この作家の近作は、介護を身近に感じるような老いた両親と子供を描くようになってきています。どうも意図的にこういう作風に着地してきているようです。茨木弁でこそないけれど、年老いた両親を観て感じるリアリティを感じるこのシリーズは身に迫るのです。日常に近いものを芝居で観たいかというと微妙ではあるのだけれど、こういうスタイルをきちんと描く芝居の存在はワタシにとってはとても貴重で愛おしさすら感じるのです。

老いた両親を演じた贈人、ザンヨウコ、夫の父親を演じた用松亮の老人造形の繊細さ。それはセリフの辻褄のあわなさだったり、指示代名詞の意味不明感、繰り返しだったり、身体、とりわけ重心の動きのリアリティなどが物語世界の強靭さをつくりあげているのです。

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