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2023.02.22

【芝居】「サーカスがはじまらない」プテラノドン

2023.1.22 17:00 [CoRich]

俳優三人による団体の旗揚げ。1月22日まで小劇場楽園。

1)タイトルが決まらない劇団会議、もうはじまる『サーカスがはじまらない』(作/菅沼岳)
2)ホテルのロビー、女優が恋人との隠れてデートだが電話で振られる。高校の同級生が偶然居合わせる。教師になっている、互いに初恋だったとうちあけ話が盛り上がり今日は女の誕生日であることを覚えており人寂しさから女が一夜の誘いをするが男は応えない、妻の命日だから。テレビなんか見なくていいから、一番大切なデビュー作の映画を見てねという『横濱短編ホテル〜第四話 初恋の人』(佐藤達×太田知咲 )
3)酔っ払い二人、ターキーといえば(トルコの鳥、ギリシャ…)、苦労話を繰り返し若者に嫌われてる同僚の話をして、しかしかれらも繰り返してる。『永久機関』(海部剛史×菅沼岳/作)
4)見合いの後の母と娘。縁談の相手はそっけないが母親はもっとなんとかならなかったのかと詰め寄る 『葉桜』(かんのひとみ×平体まひろ  作/岸田國士)
5) あの人はいま、の取材申し込み、子役がスーパーの店長になっている。受けるが、クイズでも食レポでも出る気満々、発注は間違えててアルバイトにも馬鹿にされていて、取材する側がいたたまれない気持ちに。 『あの人は今』(海部剛史×菅沼岳/作)

6) 安いアパート、家賃を滞納して誰かいい男を捕まえることを妄想し酒に溺れる女、大家は自分と他人と金は安いアパートと介護の現実ゆえ。自称画家の男も稼げてないがだんだん絵で生活できるというが死後に売れるという夢。プテラノドン(太田知咲×菅沼岳×平体まひろ) 『片隅にて待つ』(作:平体まひろ)
7) 学校、副校長になった女、同窓会の相談に訪れる男女。委員長という女は明るいが父の介護、男はそれを気に掛けている。 『多分、きっと、今日も』(かんのひとみ×佐藤達×太田知咲 作:菅沼岳)

「〜はじまらない」は、劇団員三人の顔見せ的なオープニング。なるほど、名刺代わり。

「初恋の人」はワタシも見てるけれど、例によって忘れてる一編。年齢を重ねてから偶然再会した、告白できなかった初恋同士の二人で盛り上がるけれど、思い通りにならないほろ苦さ。女優として仕事をしていることを男が知らない、というのが実はいい味わいを生むのです。男を演じた佐藤達は、田舎から来た、という人の良さの造型の巧さの折り紙付き。女を演じた太田知咲は細やかに探り探りからの盛り上がり、そして残念に思っても、初恋の人に自分の最高の仕事を知らせる格好良さ。

「永久機関」は、酔っ払いがちなワタシには身に覚えありまくりの一本。繰り返してる人の噂話を繰り返してる二人、という合わせ鏡のような無限大のぐるぐる。おじさん二人の会話を楽しく聞かせるのです。

「葉桜」(1, 2)は 見合いの後の二人、時代なりの恥ずかしがりだったりの雰囲気だけれど、しかし彼女たちだって、職業婦人が珍しかった時代を生きていくための煽りだったり、相手の品定めだったり、男のワタシが知らない会話という戯曲の雰囲気を丁寧に。 ずいぶん久しぶりに拝見した、かんのひとみは年齢を重ねて母親の説得力、娘を演じた平体まひろはちょっとぐずる感じに娘らしさ。

「あの人〜」は、かつては人気だった人がいわゆる「一般の人」になっていて、苦労もしているけれど、あわよくば芸能界に返り咲く気満々というコミカル。ちょっと間違えればイタい人をどうコミカルに見せるかは微妙なバランスで、取材者側が先にいたたまれなくなる、という構図は観客のいたたまれなさを中和させるつもりなのか、どうなのかグルグルと考えるワタシです。

「片隅〜」はワタシは未見の「しらみとり夫人」(amazon)を原作にした一本。安アパートの一室、夢と楽しくない現実を抱える三人三様、そのバランスは単に部屋に虫が出たからと言う些細な切っ掛けで崩れるのは、日常が微妙なバランスで成り立つという説得力。

「〜今日も」は、同窓会の相談に訪れた男女と恩師三人の会話。年齢を重ねてそれぞれに事情を抱えていたり、その人を気に掛けていたりという現在。日常は続くし、良くなったらという祈りにも似た想いがとてもいい後味なのです。

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