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2023.02.28

【芝居】「生活と革命」マチルダアパルトマン

2023.2.11 18:00 [CoRich]

短編で紡ぐ105分。2月12日までOFF OFFシアター。

母親の葬式後、介護のために帰郷していた妹と、同居していた兄が帰宅する。葬式に参列し目立っていたアジア人女性と結婚を考えている兄、妹は東京に戻らず外国で働こうと考えている。「ふやけたヌードル」
男が死んでいる部屋で鉢合わせする二人の女性。殺したのはどちらか。付き合って2年目、8年目でマウント取り合うなか、もう一人。「のがしたフィッシュ」
男が友人を自宅に呼ぶ。キオスク店員を密かに慕い二人きりでファンクラブを作って見守ってきたが、抜けるのだという。偶然その店員に出逢って結婚することになったという。「ひみつのキヨスク」
クラブで出会い転がり込んで暮らし半年経った女が部屋を出て行くという。実は富山で結婚していて夫が遠洋漁業から戻るのだという「つらなるワンナイト」
田舎に帰るからネコを飼ってくれないかと友人に頼むが、自分は飼えないが、心当たりがあるといい聞いてみる。が、その人も自分では飼えないから心当たりをあたるといい「めぐるキャット」

互いには繋がりがなさそうな20分ほどの短編のオムニバス。

「~ヌードル」は田舎の町でくすぶる兄の外国人との結婚を機に、妹は国外に出る自分の姿をその婚約者に重ね「異国で暮らすこと」の厳しさを改めて感じとり、兄はこの土地を出たこともない今までの生活だけれど、その妹を訪ねたり新婚旅行で世界を広げてみようと思い立つという、兄妹の次の人生のステップという未来を感じさせる物語。静かな語り口だけれど、人物の厚みが滲むよう。妹を演じた松本みゆきは広がる前向き、兄を演じた坂本七秋は初めて世界を広がる覚悟の解像度。

「~フィッシュ」はエキセントリックな血まみれの死体と、女二人のあわや修羅場。恋人の取り合いというよりはマウントの取り合い、で会話を進めるうちになぜかババ抜きをする展開で落ち着いてしまう二人。血まみれで現れてあきらかに殺したのはこいつなんだけど、そこには目もくれず、二股が三つ股になっただけかのように、ババ抜きに取り込んでしまうのは、何が問題で何が混乱で何が勝ち負けかがわからず、ぼやけていく感じが楽しい。正直、若い女優二人の区別がつかないワタシ(歳取って加速してます)ですが、ある種のキャットファイトを安全な場所から眺める楽しさのような、すみません。

「~キヨスク」人知れず何かを尊く思うファンクラブという「あそび」。買い物はしたとしても直接はコンタクトしないのがもちろん暗黙のルールなんだけど、出逢ってしまって、恋に落ちて結婚まで至ってしまうという偶然だってあり得ないわけではなくて。置いてきぼりを喰らった男にとっちゃ絶望ですらあるけれど、彼がいたこのテンションだからこそ、二人がいままで口にしてこなかった結婚に踏み出せたともいえなくもないわけで。抜けることを決めた男を演じた葛生大雅は前半の男友達との会話と後半の彼女(松本みゆき)との会話のコントラスト。ある意味裏切られた男を演じられた久間健裕、滲む悔しさのパワー。
「~ワンナイト」わりと女にだらしない男だけれど、転がり込んで来た女と暮らすうちにちょっと真剣になりかけたところであっさりと去ろうとする女。最初のだらしなさから、行きずりのワンナイトを繰り返しているだけだと思っていた女と、ワンナイトではなくなって心寄せはじめてしまっている男のズレの楽しさ。遠洋漁業の夫が居ない隙のアバンチュールというのはなかなか強引だけどヤケに説得力がある感じ。 去る女を演じた小久音の決心の力強さ、男を演じる大垣友はこういう軽さがとても似合うと思うのはワタシの偏見か。

「~キャット」ネコを引き取ってくれる友だちの友だちを探してスクロールするように連なっていって、ぐるりと最初に戻る、というのはまあ早々に予想出来るところだけれど、フラれた男が思っていた女が飼っていたネコが来るのだという着地はちょっと面白い。この二人は再会するんだろうかどうだろうか。途中も、片想いや転職で離れるとか、寂しい女の一人暮らしとか、ネコを飼いそうな、シチュエーションのカットバックはちょっといい。

まさにアラカルト的に場面も関係も時間軸もバラバラなスマートで軽やかな5本は気楽に見られるけれど、何か裏テーマ的なものは有るのかしら。演出をそれぞれの役者が担うということのバラエティは楽しい。

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2023.02.27

【芝居】「グリムグリムの無念を語ろうの会」れんげでごはん

2023.2.5 15:00 [CoRich]

劇団としてずいぶん久しぶりの公演。いそいそと特急に乗って伺いました。上土劇場で2月5日まで。45分。

顔バレ厳禁でマスクや仮面を付けてのマンガファンのオフ会。主催の男と二人の女、何人来るかはわからなくて、オフ会の開始まですこし時間があるなかで。主催の男の個人情報を聞き出したくてしょうがない女、巻き込まれる女。

「グリムグリム」が打ち切られたマンガのタイトルで、そのオフ会だということは終幕で初めてわかるのだけど、そんなごく小さな初めてのオフ会のぎこちない幹事。妹の結婚した相手が行方不明で、やっとのおもいで探し出したオフ会に来た女。序盤は彼女の目的が判らないので、彼女がストーカーっぽいある種の怖さの序盤。ほどなく正体は判るけれど、男の側の視点ではそれが確かに新郎として出席したのはレンタル家族的な仕事にすぎず、つきまとってると言われても週に一回のLINEぐらいだったり、駅の書店で一回ぐらいの偶然としか思えない程度だったり。どっちもどっちだし、どっちが正しいかも判らない会話なので、巻き込まれるもう一人を置いてるおかげで、その混乱に巻き込まれる観客の視座が安定して見やすいのです。

出てこない件の妹が嘘をついているかどうか、嘘をついていればすぐ折り返しの電話かけてくるはずで、電話の音でおわる終幕。妹が嘘をついてた、でいいのかなぁ。はっきりしない方が楽しい気もするけれどどうなんだろう。 予測出来ないコロナ禍だからマスクしたままの演劇を考えたのかどうかはわからないけれど、結果的には仮面つけたままでわりと深刻にもなりそうな話をしてるのは絵面として滑稽で楽しい。いっぽうで、この劇場の規模に対しては少々声が通らない厳しさは正直あってギリギリのラインという気もします。

なんかちょっと人見知りなごたごたの物語はこの劇団の持ち味の一つで、その原点に立った一本だなぁと感じるワタシです、といっても云えるほど本数を見てるわけではないのだけれど。

しっぽをつかんでy

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2023.02.22

【芝居】「サーカスがはじまらない」プテラノドン

2023.1.22 17:00 [CoRich]

俳優三人による団体の旗揚げ。1月22日まで小劇場楽園。

1)タイトルが決まらない劇団会議、もうはじまる『サーカスがはじまらない』(作/菅沼岳)
2)ホテルのロビー、女優が恋人との隠れてデートだが電話で振られる。高校の同級生が偶然居合わせる。教師になっている、互いに初恋だったとうちあけ話が盛り上がり今日は女の誕生日であることを覚えており人寂しさから女が一夜の誘いをするが男は応えない、妻の命日だから。テレビなんか見なくていいから、一番大切なデビュー作の映画を見てねという『横濱短編ホテル〜第四話 初恋の人』(佐藤達×太田知咲 )
3)酔っ払い二人、ターキーといえば(トルコの鳥、ギリシャ…)、苦労話を繰り返し若者に嫌われてる同僚の話をして、しかしかれらも繰り返してる。『永久機関』(海部剛史×菅沼岳/作)
4)見合いの後の母と娘。縁談の相手はそっけないが母親はもっとなんとかならなかったのかと詰め寄る 『葉桜』(かんのひとみ×平体まひろ  作/岸田國士)
5) あの人はいま、の取材申し込み、子役がスーパーの店長になっている。受けるが、クイズでも食レポでも出る気満々、発注は間違えててアルバイトにも馬鹿にされていて、取材する側がいたたまれない気持ちに。 『あの人は今』(海部剛史×菅沼岳/作)

6) 安いアパート、家賃を滞納して誰かいい男を捕まえることを妄想し酒に溺れる女、大家は自分と他人と金は安いアパートと介護の現実ゆえ。自称画家の男も稼げてないがだんだん絵で生活できるというが死後に売れるという夢。プテラノドン(太田知咲×菅沼岳×平体まひろ) 『片隅にて待つ』(作:平体まひろ)
7) 学校、副校長になった女、同窓会の相談に訪れる男女。委員長という女は明るいが父の介護、男はそれを気に掛けている。 『多分、きっと、今日も』(かんのひとみ×佐藤達×太田知咲 作:菅沼岳)

「〜はじまらない」は、劇団員三人の顔見せ的なオープニング。なるほど、名刺代わり。

「初恋の人」はワタシも見てるけれど、例によって忘れてる一編。年齢を重ねてから偶然再会した、告白できなかった初恋同士の二人で盛り上がるけれど、思い通りにならないほろ苦さ。女優として仕事をしていることを男が知らない、というのが実はいい味わいを生むのです。男を演じた佐藤達は、田舎から来た、という人の良さの造型の巧さの折り紙付き。女を演じた太田知咲は細やかに探り探りからの盛り上がり、そして残念に思っても、初恋の人に自分の最高の仕事を知らせる格好良さ。

「永久機関」は、酔っ払いがちなワタシには身に覚えありまくりの一本。繰り返してる人の噂話を繰り返してる二人、という合わせ鏡のような無限大のぐるぐる。おじさん二人の会話を楽しく聞かせるのです。

「葉桜」(1, 2)は 見合いの後の二人、時代なりの恥ずかしがりだったりの雰囲気だけれど、しかし彼女たちだって、職業婦人が珍しかった時代を生きていくための煽りだったり、相手の品定めだったり、男のワタシが知らない会話という戯曲の雰囲気を丁寧に。 ずいぶん久しぶりに拝見した、かんのひとみは年齢を重ねて母親の説得力、娘を演じた平体まひろはちょっとぐずる感じに娘らしさ。

「あの人〜」は、かつては人気だった人がいわゆる「一般の人」になっていて、苦労もしているけれど、あわよくば芸能界に返り咲く気満々というコミカル。ちょっと間違えればイタい人をどうコミカルに見せるかは微妙なバランスで、取材者側が先にいたたまれなくなる、という構図は観客のいたたまれなさを中和させるつもりなのか、どうなのかグルグルと考えるワタシです。

「片隅〜」はワタシは未見の「しらみとり夫人」(amazon)を原作にした一本。安アパートの一室、夢と楽しくない現実を抱える三人三様、そのバランスは単に部屋に虫が出たからと言う些細な切っ掛けで崩れるのは、日常が微妙なバランスで成り立つという説得力。

「〜今日も」は、同窓会の相談に訪れた男女と恩師三人の会話。年齢を重ねてそれぞれに事情を抱えていたり、その人を気に掛けていたりという現在。日常は続くし、良くなったらという祈りにも似た想いがとてもいい後味なのです。

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2023.02.12

【芝居】「エンケラドスの水」あひるなんちゃら

2023.1.22 14:00 [CoRich]

あひるなんちゃら、久しぶりに劇場で上演する新作。75分。駅前劇場の有観客、千穐楽。

夫婦の家に遊びに来た女にかかってきた電話。よくわからないけれどノーベル賞がもらえるのだという。妻と女はスウェーデンに旅行することを決めてしまう。女が勤めている研究室の先生はノーベル賞がほしすぎて像のフィギュアを飾ったりしているが、女の同僚のアルバイトがシフトの相談からの勢いで嘘をついてしまったことは言い出せない。先生はやっぱりスウェーデンに行って裏ノーベル財団の陰謀を暴こうと思っている。

夫婦の家、研究室の先生とアルバイトたちの二箇所をベースに、スウェーデンの旅先を織り交ぜながら。

研究室でアルバイトこそしてるけどノーベル賞受賞するような人ではない女に降り掛かってきた受賞の誘いの怪しさの序盤から、それにホイホイと乗ってしまうある種の軽さが作家の持ち味と感じるワタシです。あるいは、土星の惑星・エンケラドスに生命の起源を探求する研究者が、ノーベル賞が欲しくてしょうがないという俗な感じはワタシに地続きな感じで楽しい。空港で先生とアルバイトの女がすれ違うのをいちいち画的に止めてみせるベタな感じも。

作家の個人企画で続いていた宇宙を巡る物語を劇団公演の中央に据えたのは初めてだったかどうか記憶が怪しいワタシですが、ノーベル賞のために訪れたスウェーデンで見るオーロラとか、探査機を送り込まずに視覚などの間接的な手段で宇宙を研究する意義などそこかしこにロマンが見え隠れするのもちょっといいのです。

終盤、観測数値に新しい傾向をみつけたアルバイト、先生に言わずに論文出しちゃうかと企んだりするけれど、今の生活が続いていればそれでいい、というところから、終幕に夫婦の家を再訪した女が、2年で人類は進歩した(マスクは要らないぐらいに)という今のワタシたちに直結させ、さらには序盤での「飲み物飲むのが面倒くさい」ということもコップも含めてマイムだからマスクもモノ無しで演じていたのだということが解決する巧みさに舌を巻くのです。

ノーベル賞を貰えると言われた女を演じた篠本美帆のそのまま信じて歩いてしまうある種のパワー。アルバイトの女二人を演じた石澤美和、松木美路子のホントにコミカルで小気味いい空気。夫婦を演じた根津茂尚とワタナベミノリの困らせられる感じもちょっといい。 今作においては、とりわけ先生を演じた杉木隆幸はごく生真面目なのに、どこか抜けてるとうかズレてるという研究者っぽさの間合いと説得力が抜群なのです。

この劇団の前説は作演が自ら行うのだけれど、携帯電話を止めなくていい、笑ってもいい、みたいな緩さを客席に醸成させるのがホントにうまくて、千穐楽では電話がなっても他の客も気にしないでおだやかにいこう、というマインドセットが功を奏していて、上演中ロビーから聞こえた子供のわりと大きな声もおだやかで居られるワタシです。全ての芝居がこの手を使えるわけではないけれど、少なくとも今作においては、そういうハプニングから結果として芝居空間を守ってる強さを信頼するワタシです。 -

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2023.02.04

【芝居】「呪いならいいのに」たすいち

2023.1.21 18:00 [CoRich]

2017年初演作の再演。ワタシは初見です。1月22日まで上野ストアハウス。90分。

呪いを解きたくて旅をする呪術師の男とその一行。ある町でであったのは、幸せに暮らすごく普通に見える家族だったが、その家族はどんどん増えているのだという。姉を探している男は、行方不明の姉がこの家の家族の末っ子として暮らしていることを知る。この家の隣人はかつてこの家に住んででいた親友を心配している。

家族が増え続ける家と、呪術師なのに呪いにかかっている男と女と犬の一行、姉を探す弟と思いを寄せる生霊の女、という3つの要素で進む物語。増殖する家族というフックはホラーっぽく、人数も多くコミカル要素もあるし、家族となる呪い、という異型なるホームドラマという面白さはあるのだけれど、正直にいえば家族の人数、隣人や飼い猫と野良猫など要素が多すぎる感はあって、ちょっとガチャガチャしていると感じるワタシです。小劇場の迫力という点ではもちろんその源泉になっているとはおもうけれど。

物語そのものの力という意味では、旅する呪術師たち3人が印象に残るワタシです。おそらくは呪術師という解決策のために導入されたであろう役だと想像しますが、交通事故で死を覚悟した恋人がかけたのは、他の誰かとしあわせになってほしいがための「恋人への想いがある限り幸せになれない」という呪いで、対して恋人を失った男が自分にかけたのは「死んでしまうこの女を失ってしまうと幸せになれない」というある種の「賢者の贈り物」な関係をもった二人と、共に旅をする犬(にされる呪いをかけられた人間)というパーティのあり方の人物たちの造形の細やかさも含めて実にいいのです。

劇団twitterアカウントが秀逸で、衣装をつけた役者の写真と役名、その役者扱いの予約アカウントを紹介するのがとてもいいのです。当日パンフだけでは思い出せない役があっても、衣装とかどんな人物だったかを一緒に見られるのはありがたいワタシです。

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【芝居】「恥ずかしくない人生」艶∞ポリス

2023.1.15 17:00 [CoRich]

主演女優が怪我で降板という中、二人の代演をたてて走りきった95分。1月15日までシアターTOPS。

女子留置場の留置担当の部長と、副所長は不倫を続けている。留置担当官たちは、いい歳をして声優の夢をキラキラと語っていたり、刑事になりたすぎていろいろ行き過ぎたり、同僚からの圧力をうまくかわせなかったりとそれぞれ。
ある日、姑を刺したとして、新たな留置者がやってくる。部長とは幼馴染だった。面会に訪れる夫は芸術家を名乗るが仕事も家事もしておらず、勝手なことを言ってたりする。

幼馴染の二人、独身だったり結婚してたりと思えば遠くに来たものだという時間の流れはありつつ、そこそこに仲が良いと思っていた片思いに近い非対称な関係。部長の方は仕事をここまでこなすようになるけれど、だらしない不倫を続けているし、怒らないという特性はアンガーマネジメントのスキルというよりは、父親からの怒らないようにと半ば呪いをこの歳になっても持ち続けているということ。いっぽうの刺した女の方はマザコン夫とその母のわがまま放題で言葉も思い込みもひどく、何をやっても怒らないと舐められ耐え忍ぶ人物という造型。

恋を逃してまでバリバリのキャリアで生き続けてきた女と、結婚し家庭に入った女という両極端であっても、自分のしたいことをしたいと言い出せない呪縛の中で生き続けてこの歳に。いらつく言動を続けるマザコン夫を殴ったのは幼なじみで、その夫が答えられなかった「妻の好きなもの」をこの部長は知っていて。何でも出来るはずだったあの頃に戻るような安心感と爽快感。実際の問題は実のところ明確に解決されるわけではないけれど、あの時には確かに持っていた何かを認識できたのだ、ということが一歩になるのだと思うワタシです。途中挟まれる女たちのラップバトル的なシーンはミュージカルのような心情の吐露で圧巻の迫力だけれど、描かれているのは結局のところ彼女たちの閉塞感のバリエーションで、女たちがみな持っている何かを広く敷衍する感じがします。

留置担当官や留置者たちもまた一癖も二癖も。自分のキャリアを手に入れたいがために人を陥れることに躊躇がなったり、いい歳をしてもなお夢を追い求めるある種のイタサを包み隠さず持っていられる強さだったり。この声優の夢のオーディション費用がまあまあ盗られる怪しさとか、金をせびっていると見せかけての借金という逆転もちょっとほろ苦く面白く。 歯の絵を描く不器用な留置者、実は知る人ぞ知るアーティストってのも、なんか今っぽくてちょっと面白い。

代役として部長を演じきった関絵里子の生真面目な造型、元々の今藤洋子や前半の代役となった異儀田夏葉それぞれのバリエーションはちょっと見たかった気も。幼なじみを演じた小林きな子の穏やかにみえて見え隠れする秘めた強さ。再犯を繰り返す留置者を演じた徳橋みのりの直情でヤンキー風情も面白く、マザコン夫を演じた近江谷太朗は自覚のない横暴さ、穏やかなのに観客を苛つかせるすごい力。

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