【芝居】「すずめのなみだだん!」やみ・あがりシアター
2023.1.7 14:00 [CoRich]
2017年初演作、劇団の再演希望アンケートで1位という触れ込みの100分。ワタシは初見です。1月8日まで駅前劇場。
「横の声は聞かず、ダダンの縦の声を地面から聞く」教えを忠実に守り世間から隔絶して暮らす人々。その教えを広める期待を背負って若い二人が郷里を離れて人里へおりていく。
途中で離ればなれとなった二人の一人は、靴職人の家に住むことになる。地面の音を聞くために靴を履くのを嫌がりダダンの教えを守りながら通う定時制の学校にはさまざまな人が居る。そんな日々のなか、久しぶりに再会したもう一人はマッサージ師として働きむしろ地面から離れたいと考えている。
大勢で足踏みならす序盤の圧巻、そして一人足を踏みならし続ける力強さを通奏しつつ、 隔絶されある宗教を信じてくらす人々の中から、いわゆる私たちに近い価値観の現在の世界にやってきたことで巻き起こす物語。クリスチャンとその子供の関係なども交えていて、初演がどうだったかわからないけれど、宗教二世という「問題」が通奏低音のように流れていると感じるワタシです。
隔絶されている宗教、横の声とは人の意見、縦の声とは過去の人々つまり自分で考えるという教えなのだけどあとになって、その実、考えを口にすることで人々が考えをすり合わせて落ち着き処に着地するという説明が見事で、一人になったすーちゃんにダダンの声は聞こえず不安になる、ということの説得力。もう一人は閉鎖された宗教的集団の中でネットを通じて外の世界を知り得たからここから抜け出したいと思うというのも、昨今の宗教二世に通じる感覚なのです。
ひたすらに明るくまっすぐであるヒロインは、工事現場でキツイ仕事をする若者だったり半笑いで軽薄に生きているように見える若者、若くして妊娠する女、友だちが居なくて帰りたいといい続ける女、子供のために手に職を付けたい女などさまざまな人々を巻き込み、郷里が無くなってしまった彼女はこのコミュニティの中で生きていくことを決めるのです。終幕、若者が作ってくれた靴を履くシーンがとても象徴的。
ヒロインを演じた土本燈子は裸足のままで演じ続ける底ぢからと、人々を巻き込む説得力。もう一人郷里を出てきた女を演じた加藤睦望はその逆にひっそりと、郷里を忘れて生きていきたいがゆえにさっさと靴を履きこちら側で生きているリアリティ。ヤンキーだけど簿記を勉強したい女を演じた星秀美の生きる力、マッサージに通う男を演じたふじおあつやの斜に構えるけれど人に向き合う感じ、帰りたいといいつづける女を演じた小林桃香の生きづらさの解像度が印象に残ります。
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