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2022.12.08

【芝居】「ロミオ アンド ジュリエット アット ドーン!」waqu:iraz

2022.11.20 16:30 [CoRich]

オノマリコ脚本によるワクイラズの手によるロミジュリ、ミュージカル。130分の千穐楽。APOCシアター。

現代のとある二つの王室の物語。先代の死後に国王となった姉は高校生の娘・ジュリエットに跡を継がせたいと考えている。国王になれなかった妹は夫を亡くし喪服ですごし王家となりたいと思っているが、その娘は一般人と結婚して王家を離れ、息子・ロミオに王となる望みが託されるが、その気はないし、友人の政治家の息子に恋心を抱いていて、パーティ中のキス写真をSNSで拡散される。そこにはジュリエットが居た。
居てはいけないパーティが見つかりそうになり、森へ逃げることになったジュリエットとロミオは疲労困憊してたまたまUber配達員の食べたことがないファストフードを貰って、知らないことが沢山有ることを知る。

ミュージカルでロミジュリで、とは思いつつ、なんせひと癖ある作家(失礼)です。ケイタイやSNSやUberのある現代の物語に引き寄せて再構築しています。伝統の重さとそれに押しつぶされそうになる若者という二項対立にしてるのが面白い、と思ったら作家が書いてました(そりゃそうか。でもオープンに書いてくれるのは嬉しい。答えなんかないんだけど、正解にたどり着けた気がして)。

この構造にすることで、それぞれの家の中での対立というという軸が出来た効果は絶大で、国王の娘たちである姉妹の対立、さらに姉である国王が継がせたいという娘への呪いと、妹が夫を亡くし王家となりたくて子供たちにかけた呪いという三つの対立(あるいは呪いと反発)を作り出している発明なのです。

終幕、その押しつぶされそうな若者たちがナイフを手にして、という不穏な結末は、経過はだいぶ違うのに、ロミジュリ的な悲劇かとも思うし、タイトルのドーン(Dawn=夜明け)かもしれない、というかすかな希望があったらいいなと思ったり。

ミュージカルは得意でないワタシは、これだけ歌える役者を取りそろえていても、ワクイラズ常連の役者以外初見でした。コンパクトな劇場ゆえなのかはわからないけれど、圧倒的な声量、とりわけパーティのシーンの男たち(都竹悠河=ロミオ、尾曲凱=マキューシオ、若尾颯太=ペンヴォーリオ)のある種のホモソーシャル感も含めてとてもよいのです。あるいは、ジュリエット(隈元梨乃)のカタブツ家庭教師なティボルト(植竹悠理)の慌てる感じもいいし、モンタギュー(を亡くした妻=松尾音音(youtube))のあの小さい身体から出る声量も凄い。

ワクイラズ常連組はもちろんの安定感。二人の若者の新しい扉を開くキッカケになるUber(乳母!)配達員を演じた武井希未はポップな語り部というかそれぞれの役と観客たちを繋ぐ役割の要をしっかりと。呪いを早々に察知して一般人と結婚して王家を出たロザラインを演じた小林真梨恵は演出や振付も兼ねていて、しかもこの凛とした立ち姿。「姉」キャピュレットを演じた関森絵美は娘にずっと呪いをかけ続けるある種のヒール役で居続けるある種の怖さはトラウマ級の説得力なのです。

選挙で落とされる政治家とは違い、血筋だけといえばその通りの王家は何を云われても反抗をあからさまに出来ないという重圧の厳しさは現在の日本の姿であったり、詳しくは知らないけれど英国の姿にリンクする構図も描き出します。そんな物語の中にあっても、Uber配達員から貰ったマクドナルドを「濃い塩味のポップ、油っこいけどカラフル」(だと思う..)なんて初めていいものを見つけた時のキラキラしたセリフを書いてしまう作家に舌を巻くワタシです。

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