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2022.12.24

【芝居】「凪の果て」動物自殺倶楽部

2022.12.17 18:00 [CoRich]

鵺的の高木登による個人ユニット。95分。久々に訪れた雑遊はいつの間にか地下ではなく一階に移っていました。

夫が愛人を作り、夫妻両方が弁護士を立てて争う。妻は高圧的な言葉を投げつけ、しかし決して離婚はしないと言い張る。 原因を作った夫はおどおどした態度で離婚して愛人と暮らしたいと言い続けばかりで妻との対話は拒否していて、謝罪すらも拒み、双方の弁護士は困っている。
その少し前、夫の弁護士が夫の愛人と会っているところに妻が訪れる。愛人はストーカーめいた電話も困っているし、結婚を積極的には望んでいないし、法廷にも立ちたくないというのは、実は暴力を振るう夫から逃れたいのと、暴力を振るわないで泣き言を言うだけの男が傍らにいてくれることが平穏の暮らしなのだという。

暴れる妻と、怖がり続ける夫という描写で始まる物語、観客はもちろん夫の側に近い感情だと思うのだけれど、徐々に夫の意味の分からない拗らせが徐々に明かされます。負けた気がするから謝りたくないし、かといって、妻の剣幕が怖いから、妻の側で勝手に忖度して、離婚が成立して、愛人と一緒になりたいのだということが判ってくるにいたり、夫の難しさと周りの困り具合が明らかになるのです。

妻の側の弁護士(男性)は優秀で、夫の側の弁護士(女性)とかつて夫婦で、やや上からの目線で、この案件から手を引くことを決めるというのが一幕の結末。

時間は巻き戻り、愛人を加えて、登場人物の女性三人(愛人、妻、夫の弁護士)での会話劇になります。実は愛人もそこまでは結婚を望んでいないこと、だけれど誰か男が傍らにいてほしい「タイプ」でずるずると関係を続けていることが明らかになることと、 愛人の存在を妻の優秀な弁護士は利用して離婚をちからづくで勝ち取ってしまうアングルを読んだ弁護士は依頼者である夫を裏切ることを決めるのです。つまり離婚を成立させないために女性三人がスクラムを組む、というどんでん返しは職業論理的に悩んでるように見えないと言う点でやや強引だけれど、痛快ではあるのです。全体の構図としては愛人を結婚させず、離婚を成立させず、しかも上から目線の男性弁護士の裏をかいたという意味で女性弁護士もある意味で勝つ、という三人の女性の勝利もまた痛快。とはいえ、勝利になんかグラデーションある気はするけれど。

三脚の椅子、観客を向いていたりしていても、それは向かい合っていたりという役者を正面から捉えるという演出。終始、不穏な「音」が流れている舞台の不安さもちょっとおどろおどろしく。

男性二人は結果的にはヒールの立ち回り。妻の弁護士を演じた函波窓は上から目線の造型でいけすかない感じ。夫を演じた橋本恵一郞はすさまじく拗らせて面倒という言葉では言い表せないほどの扱いづらい造型で邪悪なヒールをきっちりと。

愛人を演じたハマカワフミエは、夫の暴力には耐えかねていて、暴力を振るわないというだけで傍らにいてしまうという、男が居ないと不安で仕方ない人物を細やかに奥行きを。妻を演じた三浦葵は暴れ回り強い言葉と強い目力でシンボリックな造型で、強烈な印象を残します。夫の弁護士を演じた赤猫座ちこは若い女性だけれど芯の力強さという「希望」を物語に貫く役をしっかりと。

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