【芝居】「瞬きと閃光」ムシラセ
2022.12.4 17:00 [CoRich]
ムシラセの新作。女子校の写真部をめぐる濃縮の120分。12月4日までシアター風姿花伝。似顔絵の相関図が有り難い。1月30日まで配信中。
ミッション系の女子校、写真部。兼部も居るし、写真の好き度合いもさまざまな部員たち。コンクールが近づいてそれぞれ作品を作るが、もう十年ぐらい賞を取っていない。文化祭も近づいてる。
部員の一人は優等生だけれど、コンテストになんとしても入賞したいと知恵を巡らせる。写真がもの凄く好きな一人は、部室の中で「お化け」を見てしまうが、「もじゃ」と呼び、仲良くなって写真を教えて貰ったりする。
女子高生たちと、彼女たちが仕事とか恋とか、これから先の人生に思いを巡らせたり、あるいは大人たちが過去の自分を重ねたりと交差するつくりは、まさにジュブナイル。骨格をこのままに60分にできれば、高校演劇で人気になりそう。
物語の骨格は後半になって明らかになるのだけれど、写真好きな女と親友、あるいは「もじゃ」と親友だった教師の一人、という二組の親友たち。写真が好きすぎるのに、入賞したのはそれほど写真好きでもない親友の方で、喧嘩してしまう、という鏡映しの構造。高校生たるもの、才能と友情とプライドを巡る彼女たちの葛藤やある種の不安定さ、それは時代が変わってもそこかしこで起こっていることで、そのただ中の彼女達の姿が本当に眩しいのです。過去の一組は仲直り出来ずに亡くなってしまうけれど、いまただ中の一組はきちんと修復できるという希望の結末はとてもよくて。
この骨格を持ちつつ、写真をめぐる様々を現在の価値観できちんと。たとえば、一人はルッキズムを巡る男女の非対称性やその変化を大人びて語り(それは家族の想いの通りには行きたくないという戦略によるものだけれど)、一人は女性で写真家を仕事にしようとするときに直面してきた様々な理不尽を語るのです。それはもちろん、女性でもあり写真家でもある作家ゆえの切実さを持った言葉として強い力をもつのです。
スタジオで使うような背景幕をいれた舞台も美しいし、序盤で使うフラッシュ、あるいは暗室で使うような赤いライトの光のコントロールもとてもいいのです。
写真好きを演じた輝蕗はホントに元気いっぱいなボーイッシュで物語を牽引。親友を演じた元水颯香は見守るようで、このどこまでも親友な雰囲気のよさ。男性に対してやたらに厳しい女性教師を演じた渡辺実希はすらりと、しかしどこかズレたようなコミカルを挟みつつリズムを。やる気の無い顧問を演じた辻響平のしかし生徒を見ていることの繊細、終幕これもただ早く帰りたいだけじゃなくて、介護なのだという人物の救いもいいし、恋心を持った同僚を演じた小口ふみかの「頑張っている」という見方の正しさでもあって。教務主任を演じた菊池美里はどこまでも温かくしっかり、という役が私の記憶の限りではちょっと珍しく印象的。「もじゃ」を演じた工藤さやのラフさから、あるいは女子高生たちの少し先輩な視点から眺める表情がいちいち優しく、見守る大人。あるいは、仕事で理不尽に揉まれてきたことの説得力も細やかに。学校の中を歩いている部外者はついに舞台に現れないのだけれど、キャストに名前のある松尾太稀、なるほど舞台を見守っているよう、とも感じてしまうけど、でもそれはそれで。R.I.P.
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