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2022.12.13

【芝居】「蛍」第27班

2022.12.3 18:00 [CoRich]

第27班の新作、135分。再演のようですが、ワタシは未見です。11日まで三鷹市芸術文化センター 星のホール。

ライターとして認められたい女、同居するメイクの女の紹介で新進気鋭の棋士のインタビューをする。要領を得ない感じだが歩いて話すうち、名前が売れたい、それ連絡の取れない姉に見つけられて再会を願っている。
演劇部部室で将棋を刺す男の一人やたらに強く、プロ棋士の女が負けられない戦いの前に練習のために通う。
妻が顔を見てもいない冷え切った夫婦。夫は後輩との出張の一夜で過ちを起こす。
DVする母親のもとで暮らす男児、無職の男と遊びゲームをするとやたらに強い。出所してきた「姉」は母親から離れて東京に逃れようとしていたが、思い直し、弟だけを東京に逃がす。

四つの舞台それぞれの組の役者で舞台を構成します。つまり、「天才棋士の物語を追う記者の部屋」「部室に集まる学生たち」「冷めきった夫婦と不貞する男」「とある家族の過去」(当日パンフによれば)。それぞれ独立に始まる物語をカットバックで見せて、実は終盤に向かって時間軸の前後関係、別々の役者による一人の人物の重なりが徐々にするするとピントが合ってくる構成の巧みさ。

ネタバレ覚悟で云えば、無職の男と遊ぶ男児は天才棋士に成長して記者の奮闘で「姉」の居場所を知り会いに行くが会えず、DV母から事実を告げられますし、部室で強かった男はプロ棋士を目指し告白するが別の友だちと付き合っていることを知り絶望しかけるが、プロ棋士になり、そのあと結婚した妻とはとっくに冷え切っていて。ビッグタイトルで天才棋士とプロ棋士の男と対決するのです。静かな対局のなかで、それぞれの役者が個々までに積み重ねて来たことを心の声として思い切り叫ぶのが圧巻の迫力。あるいはその妻の心の平穏を取り戻す切っ掛けが天才棋士だったり、あるいは天才棋士となるキッカケは無職の男が餞別代わりにくれた小さな将棋セットだったりとか。伏線を余すところ回収する緻密さ。

正直に云えば、夫がそれほどのビッグタイトルで対戦する男の顔を知らない、というのは少々ひっかかりますが、まあ夫に興味が無いということかなと思ったり。

母を演じた石井舞のやさぐれた迫力と、ずっと秘めてきた告白の細やかな説得力。無職の男を演じた大垣友のふわっとしたダメ男だけれど男児が救われる風のリアリティ。ライターと同居する二人の女を演じた鈴木あかりと、もりみさきの二人の近しさの繊細。

とりわけ、終盤のプロ棋士対局の4人のコントラスト。静かに対局する天才棋士を演じた松田将希と髙橋龍児の「静」と、それぞれの心の声を演じたふたり、男児だった天才棋士を演じた小関えりかと、学生だった男を演じた佐藤新太のそれぞれの振り絞るような絶叫の「動」。あるいは互いの「天才」と「努力家」もまたもう一つのコントラストなのです。

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