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2022.11.15

【芝居】「ひとはなれていく」箱庭円舞曲

2022.10.22 18:39 [CoRich]

箱庭円舞曲、2021年に予定していた新作を延期して2年振りの公演。10月23日まで浅草九劇。110分。

両親を亡くし、不動産屋の勧めで残された不動産をアルファ・ベータ・ガンマと3つの部屋と共用スペースからなるシェアオフィスにした男。 1990年代、大学の先輩の男とファッションデザイナーの女が入居していて、オーナーはファッションデザイナーの女に気がある。 2000年代、先輩の男と社長秘書らしき電話を受け続けている女が入居していて、先輩の男の仕事の話を聴きに高校三年生が訪れる。 2010年代、自身の後高校生はネットビジネスで稼ぎ入居している。オーナーは地元の「知恵遅れ」の青年を掃除に雇っているが、ぜんぜん仕事をしていない。かつて入居していたファッションデザイナーが久々に訪れる。先輩の男はネット炎上をしかけられる。 2020年代、コロナ禍の中、ネットビジネスの男は業務拡大のために家を出る。先輩の男はまだ入居しているがずっと家賃を払ってないし、何の仕事をしているかも怪しい。

DOS/VやらMacの輸入業やテレビ番組、モードの二つ折りケイタイ、東日本大震災やコロナ禍と時代の出来事、ネットワークやそれによって生まれる仕事、暮らしのことやツールの変遷を巧みに折り込みながら、しかし変わらない人々、変わる人々を重層的に描きます。財産がそこそこあるから仕事のような仕事じゃないようなオーナーの男。彼が思うこと、時間の経過で変わることを描くのかな、と思っていると後半に至り不穏な空気が漂います。

ネタバレ

後半に至り、そのオーナーがシェアオフィスのあちこちにカメラを仕掛けていることが徐々に判ります。入居者でも知ってる人は知ってるということも判りつつ。

オーナーが客席を見渡すようなシーン、なるほど、役者たちを見る観客たちをこのカメラと解釈するワタシです。それは芝居として演じている役者へ、あるいは物語を紡ぐ作家、あるいはいわゆる芸能人たちを安全地帯から眺めていることであったり。オーナーはおそらく最初からカメラを仕掛ける気はなくて、両親を亡くした寂しさゆえに賑わう空間を作りたい、そこに自分も居たいという気持ちで開業したけど、もっと「欲しくなって」カメラを仕掛けたのではないかと思います。孤独を埋めるために劇場に通っていたワタシが重なるよう。 

オーナーを演じた鈴木ハルニの人懐っこいキャラクタとその裏の闇のコントラストの迫力。地元の不動産業者を演じたザンヨウコは同じ30年を経て仕事を畳む寂しさを繊細に。先輩を演じる林和義の不器用で稼げてはいない男、お気楽な感じだけれど、踏んではいけないところを踏んだときの怖さ、しかし、後輩の誕生日を覚えて居たという繋がりの大切さ。「様々な人物」を演じた白勢未生の軽やかなコントラスト。服飾デザイナーを演じた笠原千尋、気持ち悪いと云うことをキッパリと伝える凛とした立ち姿の美しさ。起業する高校生を演じた山咲和也の優秀ゆえのいけ好かない感じのリアル。社長秘書らしい女を演じた嶋村亜華里、なんだろ人懐っこいゆえのこの仕事、という説得力。地元の青年を演じた依乃王里、いわゆる知恵遅れを演じるという怖いことをギリギリできちんと。

劇団サイトでのwebパンフレットが有り難い。きちんとアーカイブを残す矜恃、素晴らしいのです。

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