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2022.11.28

【芝居】「Silent Blue ~farewell Song~」ネオゼネレイター・プロジェクト

2022.11.12 19:00 [CoRich]

ネオゼネの旗揚げ作品「SILENT BLUE」、1994年、2000年と再演を重ねる作品(全て未見)のおそらく最終章。「劇」小劇場。11月3日まで。

「ねずみ」の脳内に入り込み人類滅亡を救うような秘密を見つけるミッションが失敗に終わり脳内の図書館が火災になってから10年。協力者は身体はあるものの、目を覚まさない。脳内の図書館には帰れない男、脳内の焼け残った場所からアーカイブを取り戻している女がいる。現実の研究室跡地では植物に興味を持つ「ねずみ」と、研究員たちはそれを監視しつつ、膨大な書物や映画などを見て互いに話をして過ごしている。ある日、その場所に複葉機が不時着する。

10年前のミッションの失敗によって世界は終わらなかったけれど、その傷を負った人々が世界から隔絶して過ごしている場所。膨大なアーカイブを前に書物も映画も音楽も語り合って暮らしているというのはもはや老人たちのようだけれど、彼らは若く、それはもういろいろを背負ったままの人々が暮らしている「余生」という雰囲気。膨大な作品への多彩な、ややスノップめいた語りの数々は作家がこれまで見聞きしてきた多くの作品そのものであり、舞台の上に点在するグッズ群もあわせて、彼自身のこれまでの半生の語りのと感じるワタシです。当パンに挟まっていたA4サイズぎっしりの文字もそれを裏付けるよう。

いわゆる役名リストが無いので、役者の名前で。猪股俊明の飄々とした軽さ、横山祥二のずっと居続ける人の感じ、寄り添う松岡洋子の凛としてこの(脳内)世界を支える力強さ。蒲公仁のオジサン造型がカッコイイ。石塚義髙も髭の感じがちょっと似てるけれど、コミカルも楽しく。大和田悠太の来て、去って行くと言う旅人の颯爽。何より、私たち界わいが盛り上がるのは(元)ジャブジャブサーキットな役者三人そろい踏み。桑名しのぶは少年のようでもあり、コヤマアキヒロはスノップな雰囲気がマッチし、咲田とばこ、実は前掛け登場のシーンが密かにワタシ好きなんです(何の告白)

何かの枠組みに絡め取られて出て行けない、戻れない人の繰り返しのループ。世界は未だ終わってないけれど、いつ終わるかわからない、というのは初演の1989年から2022年の現在まで私たちが経験してきたことを勝手に積み、重ね合わせて観られたりするのは、年齢を重ねて見える風景ってのもあるんだなぁと思い出させてくれる一品なのです。しかし、フランキー堺とか淀川長治とかねぇ、楽しい。

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2022.11.24

【芝居】「グレート・ノーマル」げんこつ団

2022.11.12 14:00 [CoRich]

げんこつ団の新作。楽園。13日まで。105分。

あらすじと云うより、ワタシの覚えてたモノを全部書くメモを後半に記します。引っ込めた方がよろしければご指摘ください。

ともかく精算する生産する力のなくなっている国、それは握りつぶす力、ついに日本の産業は蓋だけは世界一になってしまった国力を滅ぼしたのは親戚のような国政、それでもそのまま絶望のなかで暮らす人々、と実は動かしているのはシイタケといういろいろなことをこねくり回して一本の物語を作り上げる確かな力。

ワタシが見はじめた頃は巨大な箱が舞台真ん中にあって(たぶん巨大なプロジェクターが入っていて)、冷房が強くかけられてた(これも多分プロジェクターのため)のですが、コンパクトにも作れるようになったなぁと感慨深いワタシです。正直に云うと、プロジェクターに関してはこの劇場では正面に座席がなくて左右に振り分けられた劇場で、ワタシがうっかり壁側の端っこに座ってしまったためにプロジェクターや、スクリーンの奥の窓の中の様子が前に役者がいると見えないのでストレスを感じます。 しかし、「オイリーヤマザキ」とは良く考えたもんだw。

以下ネタバレ

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2022.11.22

【芝居】「Four Seasons 四季 2022」フライングステージ

2022.11.5 19:30 [CoRich]

フライングステージの新作ですが、2003年初演(未見)作の登場人物たちと世界が20年を経てどう変わっていったかを描く90分。OFF OFF シアター。

ゲイの男たちが住むアパート。入居者の一人が亡くなり、故郷の兄が骨をすぐに引き取ってしまい、ゲイの友人たちは葬式に参加することもかなわない。身内たちからは縁遠い生活をしていたのに。 亡くなったおとこはそれまでに、友人たちに同性パートナーシップ協定を持ちかけ、何人かには断られ、しかしそのうちの一人とはパートナーとしての届け出をしていたし、散骨を考えて下見を兼ねてみんなで海にでかけたりもしていた。 アパートのオーナーはゲイたちが年老いても暮らしていけるようにと思っていていたが、新しい入居者を入れることには消極的で、取り壊して隣接地で勤務先でもあるケアハウスの拡充を考えているし、入居者たちもそれぞれ、転勤や家族の介護でここを出ていくことを考えているタイミングになっている。 男が亡くなって一年、このアパートの庭に集まる人々。

決して若くはない男(ゲイ)たちのものがたり。いわゆるBL的な恋心だけで生きていられるわけもなく、独り身であること、家族との隔絶、生きていくための、あるいはある種の安心のためのパートナー探しだったり、マイノリティが集まって暮らす安心感を夢見ること、家族の介護、キャリアアップによる生活の変化。人生をスタンドバイミーしているというか、長い道を歩いている人々の姿を四季を通じて細やかに描くのです。

一人が亡くなるところからスタートして、現在を演じる役者たちはそのまま、亡くなったその人物が登場すれば回想だという演出は、繰り返し使っても実にスムーズなシーンの変化で見やすくてスマートなのです。ゲイが住めるようにと考えたアパートの庭、かつては多くの人が集っていたコミュニティが年齢とコロナ禍でしぼんでいく感じはワタシにとってもリアルな感覚で現在を解像度高く描く感じ。しかも、これらのシーンをすべて役者以外には木目そのままの椅子が五脚というだけの実にシンプルな舞台で、部屋もクルマもあるいは庭までも自在にポータブルに作り出す確かなチカラ。

亡くなった弟との間に世間体を気にして拒絶すら感じていた距離を、しかし一年をかけて自分の中の僻みのような感情に向き合い受け入れていく兄という二役を演じた中嶌聡が雰囲気の違う二人のコントラスト。 アパートの大家を演じた関根信一のナチュラルにおじさんな年齢の生活者という造型がとても繊細に良いのです。

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2022.11.20

【芝居】「親の顔が見たい」麦の会

2022.11.5 14:00 [CoRich]

横浜の劇団・麦の会の本公演。115分。にぎわい座・のげシャーレ。

渡辺源四郎商店の畑澤聖悟の手による今作、初演となる 昴ザ・サードステージ版、 作家自身の劇団・渡辺源四郎商店版を拝見していますが、茶道部の部室という和室設定は初めて。クリスチャンの学校、と思い込んでたけどそうでもなく。あまり広くない舞台ゆえか、役者たちは対面して会話するのではなくて、みな客席を向いてという映像のようなスタイル、少々戸惑いますが、すぐに慣れますし、それほど大きな問題ではありません。

2時間ほどの上演時間ですが、換気か観客への配慮か休憩を入れています。休憩後には、今どきの子供たちの難読名の読み上げたりの小コーナーを入れて、大衆芸能風味があるのは、「にぎわい座」という場所の雰囲気を組み込んでいるとも言えます。

戯曲自体が持つ確かな力はそのまま。まさか自分の子供が、から始まり、次々と現れる証拠の「手紙」に右往左往する父母たち。いよいよイジメは本当にあったのだと逃げ場がなくなるとどう隠蔽するか、に興味が向いたりして。手紙が次々現れるのも巧いし、別の学校の教諭夫妻が父母としてこの場にいることで「一般的にはどうなのか」ということだったり、この学校の教師の立場からの台詞にはしづらい「生徒は本当のことを言いません」という端的な台詞を置くなど、見やすく、緻密です。 それでも親が子供を悪いことをすれば叱り、立ち直ることを信じることなのだという物語の本当に太い幹は力強く、子供のいないワタシにだって響くのです。

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【芝居】「左手と右手」小松台東

2022.11.3 14:00 [CoRich]

宮崎の一軒家で暮らすアラフォーらしき男女。若い頃からの知り合いらしい。男は東京に行って戻りを繰り返し、いまは父親の知り合いの電業店で働く。女は離婚してなんとなく男と暮らしている。ときおり女の妹が訪ねてきているが、ダメ男と結婚もせず暮らすことを責める自分も離婚を考えており新興宗教にも通っている。
この家の男の東京時代、居酒屋でバイトしていたときの友人たちが訪ねてくる。一人は独立して居酒屋を持ち、一人はライターを諦め、その店でアルバイトをしているが、地元に戻るか迷っている。
電業店の男は離婚しており、息子はこの町を出たいが許して貰えない。

宮崎ネイティブで紡ぐ作家。日常を暮らしているけれど希望を失いつつあるアラフォーの男女を核にして進める物語の解像度の高さは更に洗練されています。男は東京に出て何も得られずに戻って来ていて、女は地元で結婚し離婚して腐れ縁に近いこの男との日常を暮らしている。電業店の男はここでずっと働き、「こうあるべき」にがんじがらめになっていて、息子にもそれを強いるけれどこの場所に希望を持てない息子は「逃げるような気持ち」でこの場所を出て行きたい。いっぽうで女の妹も結婚は続けているがその家庭から心は離れていて、新興宗教にはまり込んでいて、東京から訪ねてくる男女にしたって、東京にしがみついてはいるけれど、思っていたのと違っているし、いつまで東京に居るのだろうと考えていたりする。

さまざまなバリエーションで「居場所」に迷う人々の迷う姿を細やかに、時に暴力的とも思えるほどの迫力で描いているのです。正直に云えば、ドメスティックな日常を描いてる序盤は焦点が定まらない感じが続くように感じてしまうのだけど、後半になってみると、焦点の周縁を丁寧に積み上げていたのだということがわかります。積み上げて、焦点が定まってからの後半はするするとつながっていって見事なのです。

同居している男女、女を演じた吉田久美は序盤ではダメ男を掴んだ感じなのだけれど、終幕では居場所がなくなったらここに来るように妹に云う「成長」なのか心境の変化なのか、着実に。男を演じた松本哲也の無口で「負けた」男の虚勢が身につまされるよう。電業の男を演じた佐藤達は彼の芸の一つ、紙芝居で見せる人の良さとは真逆の怖さと中年男のいやらしさとデリカシーの無さを煮詰めたキャラクタの濃さ。新興宗教にハマる妹を演じた小園茉奈の逃げ場の無い切羽詰まったリアル。

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【芝居】「スカパン」まつもと市民芸術館

2022.10.30 14:00 [CoRich]

1994年のシアターコクーン初演、2004年からはまつもと市民芸術館、そして串田和美のマスターピースとして繰り返し上演されている作品の8演め。(1, 2) 松本、水戸、北九州を経て横浜での千穐楽。115分。KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ。親子の共演が二組という感慨も。

軽快にいろいろなことをこなし軽演劇の風味を纏い、人情にほだされたりして八面六臂の活躍をしながらも、主人に対する後ろ暗い気持ちの影が差すスカパンの人物造型と、下男たるスカパンを便利に使い自分の困りごとを頼み込みながらも、刃向かう素振りに対しては断固として厳しく。彼らが拘泥する家柄や結婚という話だって、おさまるところに収まればそれでよくて、下々に大変なことを頼んで骨折ったことなんか忘れてしまうのです。格差が当たり前の日常の理不尽さ。スカパンの扱いが酷すぎるという理不尽。もしかしたら、 最初に上演されていた時代に観客たちが感じていたことは、今の私たちが感じる感想とは違うかも知れません。 モリエールが描こうとしていたことは、今作に描かれているある種の理不尽さなのか、串田和美が印象を変えた演出にしているのか、いろいろ想いを馳せたりもするのです。

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2022.11.15

【芝居】「YOKOHAMA Short Stories」Ukiyo Hotel Project

2022.10.29 14:00 [CoRich]

横浜・元町から少し上がったところにある「クリフサイド」(wikipedia)の取り壊しを知った作家・河田唱子が描き続ける横浜の風俗 (1, 2, 3, 4)の一区切りとなりそうな集大成。 様々な史実を調べ上げ、創作を混ぜ込みながらの物語は生バンドをいれて。10月30日まで。120分。

横浜駅の崎陽軒のホームで弁当の売り子と、関西の野球選手の初心な恋「シウマイ・ガール」
終戦後、ホテル・ニューグランドでマッカーサーを迎える若いスタッフと支配人。「マッカーサーズ・スイートにて」
クリフサイドに集まる人々、設計した中村順平ももちろん居る。「クリフサイド」
横浜にあった撮影所に呼ばれた有名な作家の物語を、女たちが「谷崎潤一郎・ザ・ミュージカル」
横浜中華街で作られていたピアノ、戦火の中出逢った少女と青年。「周ピアノ」

横浜に住んでいても、じっさいのところ大人になるまでは桜木町には行っても青少年センターぐらいで野毛にも黄金町にも足を踏み入れたこともなく、中華街にも行ったことなかったしというワタシです、当然クリフサイドという場所があることはTVKの公演CMで知っては居たけど、どこにあるのやら、なワタシです。なるほどなかなかの場所、隣のトンネルは昔からあったのかしら、なるほど崖(Cliff)の横だなぁと思って入場前から思いを馳せての入場。

開場中は役者たちが手を振ったり、案内したり、写真撮ったり。始まればちゃんとバンドの生演奏、広いステージをさまざまに使いあっという間の華やかな空間を走りきります。

「シウマイ〜」は今では無くなった横浜駅ホームの弁当の売り子と怪我をしたりする野球選手の、しかし恋模様がホントに甘酸っぱく二人とも可愛らしく描きます。売り子を演じた、かとう唯の魅力一杯でのスタートダッシュ。

「マッカーサーズ〜」はニューグランド315号室の物語を男二人が歌い上げるJazzの数々。戦争に負け、不安な気持ちもありつつ、客人としてきちんともてなそうとするホテルスタッフとしての矜恃、そして覚えて居てくれたと報われる気持ちがワタシまで嬉しく。支配人を演じた(ジジイにしか見えないのにw)小西のりゆき、若いスタッフを演じた岡本悠紀二人ともの声量の凄み。マイクのトラブルも止めずに走りきるのです。

「クリフサイド」はこの場所はこういう場所だという成り立ちの物語。華やかなこの場所を作り、集っていた人々に思いを馳せるのです。

「谷崎潤一郎〜」は谷崎潤一郎の酷さを女三人が断罪する物語。過去のその時代は許されていたことを現在の価値観で断罪するという難しい物語を華やかに軽やかに描きながらも、抑えるべき所は抑えるという作家の腕力にねじ伏せられるワタシです。横浜に撮影所があったなんて知らなかったなぁ。

「周ピアノ」戦火の中ピアノを運ぼうとする少女、と知り合いピアノを救う青年。横浜でピアノが作られていたということも知らなかったワタシです。戦後になれば自由に演奏できる嬉しさのハッピーエンドが綺麗に決まるのです。

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【芝居】「ひとはなれていく」箱庭円舞曲

2022.10.22 18:39 [CoRich]

箱庭円舞曲、2021年に予定していた新作を延期して2年振りの公演。10月23日まで浅草九劇。110分。

両親を亡くし、不動産屋の勧めで残された不動産をアルファ・ベータ・ガンマと3つの部屋と共用スペースからなるシェアオフィスにした男。 1990年代、大学の先輩の男とファッションデザイナーの女が入居していて、オーナーはファッションデザイナーの女に気がある。 2000年代、先輩の男と社長秘書らしき電話を受け続けている女が入居していて、先輩の男の仕事の話を聴きに高校三年生が訪れる。 2010年代、自身の後高校生はネットビジネスで稼ぎ入居している。オーナーは地元の「知恵遅れ」の青年を掃除に雇っているが、ぜんぜん仕事をしていない。かつて入居していたファッションデザイナーが久々に訪れる。先輩の男はネット炎上をしかけられる。 2020年代、コロナ禍の中、ネットビジネスの男は業務拡大のために家を出る。先輩の男はまだ入居しているがずっと家賃を払ってないし、何の仕事をしているかも怪しい。

DOS/VやらMacの輸入業やテレビ番組、モードの二つ折りケイタイ、東日本大震災やコロナ禍と時代の出来事、ネットワークやそれによって生まれる仕事、暮らしのことやツールの変遷を巧みに折り込みながら、しかし変わらない人々、変わる人々を重層的に描きます。財産がそこそこあるから仕事のような仕事じゃないようなオーナーの男。彼が思うこと、時間の経過で変わることを描くのかな、と思っていると後半に至り不穏な空気が漂います。

ネタバレ

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2022.11.14

【芝居】「楽屋〜流れ去るものはやがてなつかしき〜」Rainbow Jam

2022.10.22 13:00 [CoRich]

劇団旗揚げ二作目、ネオゼネレイタープロジェクトの大西一郎の演出で。7名の役者はみな出演しますが、3つの役を白黒2バージョンのダブルキャスト構成。ウッディシアター中目黒。 100分。 「かもめ」を上演中の劇場。ニーナ役の女優の楽屋。準備に余念がない彼女からは見えていないが大きな役を得ることなく死んでしまった女優の幽霊二人が毒づいたり、愚痴ったりしている。終演後の楽屋に、長い間病気で休んでいたプロンプターの女が現れ、ニーナ役を返すように迫る。

もともとは4人構成の戯曲ですが、今作はメインキャストでない女優がト書きを読んだり、あるいは女優ABの鏡に映る姿を演じたり、ボイスパーカッションよろしく効果音を出したりと、台詞こそ少ないものの、サブとなる役者たちもほぼ出ずっぱり。 楽屋という場所のセットで上演されることが多い作品ですが、今作は荒れ地に墓石を思わせるものがちらほらという感じ。序盤は女優たちが漂うように行き来してやがてゆるやかに始まります。楽屋に居着いた幽霊というよりは、現実の役者である女優Cもまた、過去の人物であるかのような不思議な感覚がありますが、もちろん幽霊である女優A、女優Bが見える見えないという重要なファクターがあるので、そういう「雰囲気」を感じるだけなんですが。

役を得たいあまりに心が残り成仏できない女優たち。プロンプばかりさせられ台詞はもう十二分に入っていて口ずさみ演じてみたり(「かもめ」「マクベス夫人」「三人姉妹」)、あるいは役を手放さないための必死さは単に役者ということだけではなくて、生きていくって大変、なんてことを考えたりするワタシです。幽霊の女優二人の生きていた時代が違うから海外戯曲の翻訳が時代によってことなるとか、こまかな味付けなど、前半もとても軽やかで面白いなぁと改めて感じるのです。 鏡に映る女優、ト書きを読むなど役者の数を合わせるためという中から出てきたであろう演出だけれど、それもまた物語の雰囲気によくあっていて、わかりやすい上演になっていて、戯曲の魅力、役者の魅力が存分に濃縮された一本になっていると思うのです。

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2022.11.09

【芝居】「そして、 私たちは咀嚼できない音をただ並べた。」作田令子×神戸カナ

2022.10.15 18:00 [CoRich]

60分 芸術館小ホール。土曜は一人芝居。初日に観るのは叶わなかったけれど、金曜、土曜にそれぞれの役者の一人芝居で、千穐楽の日曜14時は二人芝居で構成。

境遇が似ていると感じている二人、一人は父親が妾と出ていき、残された母親と二人での生活の息苦しさ。母親を売女とまで。あるいはもう一人、月のように潔白で気高くてしかし彼女は死んでしまう。

舞台の上にさまざに並べられたモノの間を歩きながら、他の人の言葉は字幕だったりスタッフが発声していたりという感じでの一人芝居。なるほど、一つの物語を片側ずつ上演し、最後に答え合わせのように二人芝居として全体で3ステージ。演劇祭ゆえに、何回でも観られるパスポートで、しかもキャパに余裕がある芸術館だからこその企画の面白さ。住んでいたら全ステージ通っちゃっただろうなぁ。

魂は一つ、二人が一つになるという気持ちをお互いに持ついわゆるソウルメイトの高校生二人、電車の事故で亡くなった友人と入れ替わってそのあと長く生きてきた女が取り調べられての一人語りという感じ。母親との同居に耐えられず、憧れた彼女の側にも自殺するだけの理由はあったけれど、そちら側を選びとるジャンプをポップに描くのです。

正直にいえば、くるくると入れ替わるように進む物語、どちらの視点で描かれているのかの視座が決めづらくて複雑に感じてしまうワタシ、観劇力の低下もしくは老化を感じてしまったりもして。字幕とセリフが語尾のような些細な不一致でも引っかかってしまうのも積もるとストレスに感じるのもワタシの体力がないからか。

とはいえ、なるほどこのアイデア、しかも「同じステージは一つもない」を正面突破する勇気とある種の無謀さがとてもよくて、眩しくも感じてしまうワタシです。

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【芝居】「桜レクイエム」経帷子

2022.10.15 16:30 [CoRich]

まつもと演劇祭に連続で出ている地元の老舗劇団、ワタシがこの上土劇場で拝見するのは初めてです。60分。

紙芝居を持って旅をする芸人ふたり、紙芝居の最後の一枚が無くなっている。その一枚は丘に咲く桜の木の下にあるか。墓を掘る二人は亡骸に桜の種を添えて埋めている。

ワタシの年代にとって懐かしい、というわけではない風景なのだけれど、ヒトが長く生きていれば持っているであろう追憶、欠損などさまざまな感情をいわゆるアングラ風味に描く持ち味。旅芸人の夫婦、かつての仲間だった男たちとの旅回りの一座の思い出。夢見るさくら咲く丘、夢のように取り止めなく、あるいは彼岸の向こう側にいる知り合いを思い出し、自分もやがてそちら側へ行くのだという感覚は年齢を重ねた作演だからこその味わいで、あまり違わない年代のワタシにも響くのです。

今作、たった四人でこの劇場の空間を埋めます。シンプルな物語ゆえに役者たちのチカラが支えるのです。演劇祭を何年か観ていると、松本市街地のさまざまな場所を自在に使いこなす底力はさすがだと舌を巻くワタシです。

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2022.11.02

【芝居】「秋の庭~三人姉妹のその後の話〜」アルプス乙女ユニオンズ

2022.10.15 15:00 [CoRich]

全部で4ステージでしたが、全ステージがほぼ大盛況だったようです。70分。

三人姉妹のその後。アンドレイは娘・ソーファチカにモスクワに行かなければいけないことを言い出せない。ソーファチカの伯母たちはそれぞれ若い彼女に思いを告げるが、彼女はとても強い。

三人姉妹の17年後を描く設定、長男に成長した娘がいるというスパイスがとても素晴らしいのです。女たちが次の世代に思いを告げる個別のシーンがそれぞれの人物の内面をそれぞれに吐露します。教師として生きることを決めている長女・オリガの真剣、男に愛され養って貰うことこそが重要という次女・マーシャの依存する感じ、家庭教師をしている家の主人に恋している三女・イリーナのともかく明るさという三人姉妹の対比が鮮やかに描かれるのが見事。ここに娘を留めようという大人たちの心づくしに感謝しつつ、父についてモスクワ行きを決めている娘の力強さが見事なのです。

オリガを演じた河野晴美の安定した巧さ、イリーナを演じた底抜けの明るさの造型、娘を演じた貫名有貴の素敵な力強さが印象的。

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