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2022.10.07

【芝居】「田瓶奇譚集(奇)」肋骨蜜柑同好会

2022.9.17 19:00 [CoRich]

肋骨蜜柑同好会や日本のラジオが何年か前から設定( 1, 2) している架空の町「田瓶市」を舞台にした短編を5つの劇団が上演。100分ほど。9月25日まで駅前劇場。正直にいえば、二種類の公演なので、CoRichのエントリ分けて頂くと嬉しいなぁ、ワタシは。

町工場に勤める男は住処の音がうるさく夜眠れなくなって仕事を休む。心配する先輩と呼び出された後輩が訪れて宴会をしている。そこに訪れた女は「私を治して欲しい」という「ゴーシュ」(AURYN 作・演:窪寺奈々瀬)
水と空気の町の選挙事務所。事務所を貸している社長、近所の面倒見のいい主婦、優秀な弟とそうでもない兄も兄弟で参加している。わかりやすく地縛霊も居たりする。誰を応援してるかも皆はぼんやりしている日常の筈だったが「そして誰もいなくなるまで待って」(Mrs.fictions 作・演:中嶋康太)
一軒家をタダで貰った女。職場で言い寄られたり、税務署に税金で詰め寄られたり。助けてくれる職場の同僚の本心を実は知っている。「もっけの幸い」(肋骨蜜柑同好会 作・演:フジタタイセイ)

「ゴーシュ」は眠れない男を訪ねる先輩の男と後輩の女、後輩の女が印象が変わっている、という隠し味。そこに訪ねてきた女に導かれ、高校の裏、空き地に埋まってる人形とオルゴール。それを直すことで男は眠れるようになり、しかし後輩の女は何も覚えていない、朧な着地は綺麗。

「そして誰も〜」、選挙事務所に集う人々、応援することによって何かを得られるような、あるいはぼんやりそこに出入りしてるよう。序盤早々にあからさまな「地縛霊」を登場させて、爆笑編での序盤がとても楽しい。集まる人々の俗っぽさ、場所を貸している社長の甘い汁の皮算用、面倒見のいい主婦売春の元締め。あるいは出入りしている「兄」は後半に至って誰かに唆されて無差別毒殺(一液、二液とか帝銀事件っぽいディテールが巧い)に。公務員なのに出入りしている優秀な「弟」が、実はこの一連を日々繰り返し、テープやハードディスクを本当に跡形無く消すために繰り返し上書きするのだ、という終幕、それは事件とは無縁の「水と空気の町」がウリのこの町、が見事。パソコン好きなワタシ、よくよく考えると同じ事を上書きしていたらそれは消えないで、記録が強調されるんじゃないか、と思ったりもするけど、それはご愛敬。

「もっけの幸」、貰った一軒家に住む東京から引っ越してきた女、愚図というか隙がありそうに見えるから、親切に見える職場の同僚や店長の目論見は知っていて、身を守る術がある。自分は幸せで居続けなければいけないという強い意志ゆえに引っ越してきて、それは「あの子」の為に、という理由。「敵認定」した人々を卵にするので姿を消す、というのはくるりと一回りするようで、残酷だけれど、優しいような。

「怪」「奇」両方を通じて出演する図書館の女・嶋谷佳恵、当日パンフにも、CoRIchの出演欄にも名前が無いのがちょっと残念だったりも。

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