【芝居】「田瓶奇譚集(怪)」肋骨蜜柑同好会
2022.9.17 15:00 [CoRich]
肋骨蜜柑同好会や日本のラジオが何年か前から設定( 1, 2) している架空の町「田瓶市」を舞台にした短編を5つの劇団が上演。100分ほど。9月24日まで駅前劇場。
ソーセージ工場が半ば廃墟となっていた古い団地を買い上げて寮とした部屋。二人が住んでいる。手取りの殆どを家賃とアメニティとして徴収されているが、いつか都会に出て成功することを夢見ている。最近やってきた男は夢で絵を描くのが好きで工場で働いている男になっている。「腸詰と極楽」(肋骨蜜柑同好会 作:ホトンドケイ素 演出:フジタタイセイ)
大学に入り古いアパートで一人暮らしを始めた女はあちこちがきしむ音や薄い壁の向こうから聞こえる人の声や猫の鳴き声に悩まされオカルト好きと怖がりの友人に相談して家に来て貰う。「隣は猫をする人ぞ」(たすいち 作・演:目崎剛)
小学校教諭であるワタシは同僚から子供たちの間での噂話「くるくるさん」聴かされる。事故に遭い失われた娘の小指を探し続けているという。ワタシは夢で指を探せないと自分の指を奪われるといわれるが、事故に遭ったのは同級生の少女ではなかった、と思い出す。「くるくるさん」(日本のラジオ 作・演:屋代秀樹)
「腸詰〜」は意識高い若者が搾取されている構図に、居なくなった人は都会に出て行ったのではない、ということが徐々に判る怖さがジワジワと。絵を描ける男がパッケージもデザインし、しかしそこから絶望にたたき落とされるという物語の起伏が見事。なぜその夢をみたか、という物語の「仕掛け」もキチンとしていて見やすい。抜け出すための出口はソコしかない絶望だけれど、「行かねえよ、そんなところ」という終幕の台詞のキレはいいけれど、それは力強さか絶望の中での空元気か。
「隣は〜」は一人暮らしを初めてしたときに聞こえる声や軋みがちょっと怖いという記憶を思い起こさせるような開幕から、隣は一人暮らしの筈なのに、なんか夜に猫耳をつけている男とか、いつの間にか入ってきている隣人とかの気味の悪さ。一緒に謎を解明する女3人のコントラスト、怖がりとオカルト好きと住人というのも見事。仕掛けが判った終幕、もう一度大家が呟く一言はこれが終わりではなく、続くであろう怪談の仕上げ。
「くるくるさん」は田瓶wikiにあるしないのバスの名前につながり、道路を巡る物語、さすがに作家は手慣れた感じです。正直に云えば、私が座った端の席では、小学校教諭の「私」の向こう側で喋る女性が全く見えないまま、という見切れの残念さはあるのだけれど、夢と現実を行き来し、子どもの頃を思い出し辿る時間、そして指をなくしたのは少女じゃなかったと思い至り、でも今見えている風景はそうではないから、と自分から合わせに行くという狂気。なるほど「怪」。
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