2022.7.9 18:00
[CoRich]
2017年初演作の5年ぶりの再演。120分。東京芸術劇場シアターイースト。
無い記憶を振り絞って初演の配役と表にしてみましたが、もし間違ってたらご指摘感謝です。
春風舎からシアターイーストと大幅にパワーアップ。物語の大筋は変わらないけれど、謎の生物ピー助はニワトリに尾を付けて恐竜の骨格研究というもの(登場しないけど)に、あるいは大学院生という人物が追加されたりしていて改訂しているようです。例によって記憶力がザルなので、引っ越し業者の側の物語こんなにあったっけな、とかそもそも覚えてないことも多いのですが。
初演も同じだったはずなのだけど、いわゆる『知恵遅れ』の役を普通の役者が全力で暴れる迫真の演技を行うことが、ぎょっとしてしまうようになった自分を見方が変わったなと感じます。それはさまざまな役を当事者が演じるべきだという流れをさまざまな場面で目にするようになってきたということの延長線上にありますが、初演時点ではみじんも感じなかったわけで、あきらかに自分の変化なのです。参考文献やあるいはいわゆる「きょうだい児」の当事者であるという作家(これ何処で読んだんだっけ)の当事者性ゆえにこれでいいのだ、と自分に言い聞かせるように観ていたりします。
開場時点で既に役者がいて、終演後もまだ役者が居続ける中で観客は退場していくというフォーマットは初演のまま。日常からなめらかに地続きにすることで、現実にどこかで同じ事が起きていると感じさせるこの演出はわりと好きだったりします。反面、序盤はフォーカスが定まらない感じでずっと人々を描く事が人物の厚みに繋がるとはいえ、少々不安になるというのも事実なのです。
それぞれに不安を抱えた「三人姉妹」の物語で、劇場が広くなった分、母を亡くし、次女夫婦が出て行くことで、長女次女の二人きりでこの大きな家を維持していくことが大変というリアリティは増していて、なるほど三人姉妹だなと思ったり。この家を出て行ったのは次女ではなく三女であるワタシだったかもしれない、次女の夫が元の恋人だったことと合わせて、この現実は残酷です。それでも三女が支えられるように感じる母親(の亡霊)が、きちんと人を後押しするという力強さのある終盤は今作の本当に良いところなのです。
母親を演じた藤谷みきの「お母ちゃん」な力強さは安心の要。三女を演じた緑川史絵は細やかな人物造型をきっちり。再演で加えられた大学院生を演じた藤尾勘太郎は、次女の夫が大学を追われたけれど、しかしそれは理不尽なのだと人物をニュートラルにする重要な役。社長を演じた佐藤滋のやや軽薄でコミカルな造型は重くなりがちなこの物語の中でほっと一息の瞬間を。
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