【芝居】「アカデミック・チェインソウ」MCR
2022.6.26 14:00 [CoRich]
MCRの新作。105分。スズナリ。
修学旅行のホエールウオッチングの途中で行方不明になり無人島にたどり着いた女子高生と教師たち。救助はやがて来るだろうと気楽に構る女子高生。いわゆるスクールカーストの階層を移ろうとするときの軋轢だったり、先生への恋心で行動がギクシャクしたり頭の中でメロディがなったり、それを見て戸惑う友だちとか、平均的でおとなしく何物でもないことの不安だったりと、若さゆえなのか、学校の中のあれこれが無人島でも全く変わらない日常の面白さ。それにしてもまあいいおっさんである筈の作家の、女子高生に対するこの解像度の高さ。まあ私もオッサンなのでその解像度が正しいのかはわからんのですが、少なくともリアルだと感じるワタシです。
いっぽうで離職を決めていて最後の修学旅行だったのにこの状況の重責に押しつぶされそうな担任のあれやこれやがもう一つの物語の軸。妻に別れを切り出されたり、生徒を深く想うのに何かあったら責められるのは自分だということなどイロイロ限界を迎えて弾ける寸前。演じる堀靖明はMCR常連で、キレてるのにコミカルですらある造型が見事なのだけど、本作ではあくまで真面目に生きる人物がキレてコミカルに見えるけれど、その裏にある耐えがたいストレスという深刻な状況という重層的な人物がワタシを捉えて放さないのです。
いつまでも変わらない日常が無人島に来ても変わらないまま、しかも助けが来ないままずっと時間が過ぎているという状況は、どうも時間軸が同じ一日をループしていると気付くというSFがするりと潜り込む終盤が見事。一人が毎晩見ている夢だけがその日の前日に繋がっているからそこから助けを求めるという荒唐無稽もなんか力わざで押し切る見事さ。楽しい。無人島からの変わらない日常からは抜け出したとしても、もしかしたら彼らが戻る日常は抜け出しようのない飽き飽きしたループがこれからも繰り返すかも知れない、というのはちょっと絶望的だと感じ足りもするワタシです。
女子高生なのに波止場のマドロスな造型を終始一貫して演じきる加藤美佐江と、男にはモテまくるのに自己評価が異様に低く破滅的ですら女を演じた三澤さきのカップルが見事なコミカルリリーフでリズムを作るのみならず、終盤では物語を解決に向かわせ、ハリウッドかと思わせるハッピーエンドだったりもして圧倒的な安心感。
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