【芝居】「Secret War-ひみつせん-」serial number(風琴工房改め)
2022.6.11 18:00 [CoRich]
「ドライブ・マイ・カー」の女性ドライバー役の三浦透子を迎えて、いわゆる登戸研究所の物語。6月19日まで東京芸術劇場シアターウェスト。
取材に訪れた女、「中国人」の老人に会って、話を始める。
太平洋戦争の「登沢」研究所に勤める研究者たち。軍の「ひみつ戦」のために作られた研究施設。それゆえに毒薬や家畜から作った伝染病ウイルスを研究し、実戦投入をすべく働いている。
オフィスにはタイピストとして3人の女性が働いている。女であるから学問は要らないと言われたり、いわゆるいいとこのお嬢さんだったりという人々は和文タイプを操って書類を作り続けている。若い女性と男性が同じオフィスで働いていたりすると、恋模様も起きて。
毒薬や伝染病、あるいは偽札、風船爆弾、電波兵器といった特殊な(ゲリラ戦に近い気もする)軍事研究の施設の史実を背骨にしつつ、そこでタイピストとして働いていた女性たちの物語を軸に。終戦時に徹底的に焼却・破壊されたなかでタイピストが密かに残していた「雑書綴」というシンボルを中心に描きます。
いろいろ思うところはあっても命令だから開発し、実験する研究所の男たちと、科学が好きだけれど女性というだけで研究者になれなかったり、あるいは稼がなければいけない女性が和文タイプという技能を身につけてこの研究所で働くのです。とはいえ、ちょっと恋心があったり甘酸っぱかったり、立場が違ったり、つまらない映画を誰かと話したくて職場の男子と話したことを咎められたり、代用コーヒーという日常も見え隠れ。
いよいよ大戦末期、線の細い毒薬の男は石井部隊(731)に、もうひとりは牛疫の伝染の研究に外地に。石井部隊への転属を前に命を絶ったり。
外地に赴任した男が50年を経て中国人とその土地に馴染み、あるいは日本人であることを隠して生きて来た長い年月。訪ねた女性は「雑書綴」を隠して生きて来たタイピストの女性の孫だという映し鏡のよう。
「雑書綴」を持っていた女性、その孫の二役を演じた三浦透子はそのコントラストをきちんと。出迎えた中国人となった老人を演じた大谷亮介が実に歴史を背負ってきた男の穏やかな造型を丁寧に。松村武、森下亮、佐野功といったいわば詩森組の役者の頼もしさ。しかもアラポテ大使となった森下亮のポテチのお土産までついて嬉しくて。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「業界~恥ずかしながら、ボクらがこの世をダメにしてます~」Tom's collection(2025.03.22)
- 【芝居】「ズベズダ」パラドックス定数(2025.03.20)
- 【芝居】「夜明けのジルバ」トローチ(2025.03.08)
- 【芝居】「ユアちゃんママとバウムクーヘン」iaku(2025.03.01)
- 【芝居】「なにもない空間」劇団チリ(2025.02.27)
コメント