【芝居】「花柄八景」Mrs.fictions
2022.5.14 18:00 [CoRich]
Mrs.fictionsの新作は噺家を題材にした近未来SF風味で、しかし外連もいっぱいに。80分。アゴラ劇場。
コンピュータとの対戦に敗れ人間の噺家は絶滅寸前に追い込まれた。ふがいない戦い方に弟子達も見切りを付けて出てしまう。初音ミクのCGによる落語は人気を博し大人気となった近未来。
サバを食べてしかし地獄から舞い戻ってしまう男、家に忍び込んだパンクロックのカップルと拾ってきたストリートチルドレンを弟子にすることにする。
日本風家屋、畳の部屋。それなりに弟子が居たけど人間が破れ落語は大ブームなのに人間の噺家はもうお払い箱という時代の中で、社会からはみ出してるような若者を拾って、なんか楽しげだったり、噺家修行っぽかったりと家族とも単なる師弟ともちがう雰囲気の人々の物語。通り過ぎていく人々、あるいは逝く人、継ぐ人という骨組み。サバ食べて死んだけど地獄から戻ったりという落語の片鱗がところどころにあったり、魅力的なタイトルの新作落語らしいもの(「シド&ナンシー」なんか聴いてみたい)が示されたり、ともかくもそういうタイトルを詰め込んで楽しさ倍増ではあるのだけれど、おそらくはその噺のことを知らなくても、ドタバタだったりコミカルだったり、あるいは侘び寂びっぽい感じの詰め合わせはきっと楽しくて。
噺家であることは江戸落語の風情の暮らし方をしなきゃ行けないわけでは勿論なくて、(そりゃそうだ、プロの噺家だって現代を生きている)、どんな出自でも、どんな人物でも、その人の語りがあれば噺になるんだということが物語をずっと通底してて、楽しく生きてる人々の物語はもう、もしかしたらファンタジーかと思うぐらいに現実の絶望を感じたり(個人の感想です)。
パンクのカップルを演じた今村佳佑、永田佑衣は長屋の働き盛りという雰囲気、徐々に神髄を理解していく成長する人物をきちんと。ストリートチルドレンを演じた(前田悠雅)は魅力的な造型、バカっぽい喋りの中に時々真理を突く与太郎ってことかしらん。ずっと二つ目の弟子を演じたぐんビィは落語というもののルールをさりげなく挟みつつ、物語をガイドする頼もしさ。師匠を演じた岡野康弘は枯れた感じから、若者の熱に当てられて弾けたりする振り幅が楽しいのです。
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