【芝居】「静寂に火を灯す」螺旋階段
2022.5.8 14:00 [CoRich]
8日まで神奈川県立青少年センタースタジオ HIKARI。第一回かながわネクストのもう一本。105分。
小田原なのになぜか「みちのく製菓」サブレ生産工場の事務室。社長の自宅を兼ねていて取引先や知り合いなども出入りしている。長男は引きこもっているが、ある日、自殺してしまう。
小さな事業所の事務所といった風情の舞台。事務机や応接セット、コピー機やPCなどでリアリティがあります。
日常の小さな組みあわせを人情喜劇風に描く序盤。家族や従業員や出入りする人々の会話の端々に現れるピース語られるのは、長男がごく普通の穏やかな少年だったのに、身内を助けるために傷害事件になったことをきっかけに引きこもっていったこと。後半に至り、唐突に長男は自殺してしまい、残された人々は兄を立ち直らせられなかった自分を責めたりするけれど、しかし兄の見え方ヒトそれぞれで、それぞれが自ら立ち直って行く未来を感じるワタシで、それは人々が悲しみを落ち着かせていく過程なのだと思うのです。たとえば並行して語られるサブレの風評被害からの復活もまた、人の生き死には大きな波だけれど、人々の営みはそれでも続いていくのだと対比して見せるのが巧いのです。
母親を演じた田代真佐美は人々をまとめる力、父親を演じた露木幹也が家事担当という人なつこさと構図の面白さ、出入りの業者を演じた水野琢磨はさまざまに喜劇的な立ち位置をきっちり、兄の同級生を演じた中根道治はその想いを内包する繊細な造型、事務員を演じた岡本みゆきの仕事出来るヒト感がすごい。
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