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2022.05.30

【芝居】「親の顔が見たい」渡辺源四郎商店

2022.5.5 19:00 [CoRich]

なべげんの畑澤聖悟が昴ザ・サード・ステージに2008年に書き下ろし、なんどか本公演や新国立劇場(試演会)などでの上演後、海外での上演・映画化を経て2021年劇団での上演予定だったが映像配信のみになった作品、満を持して。6日までスズナリ。

初演がTOPSだったことすらすっかり忘れているワタシです。昴では会議室だった舞台は、キリスト教の学校の礼拝堂のようにベンチ状の座席が舞台を向いていてスズナリに広い空間を生み出します。

現役の教師が書いたのは10年以上前のことなのに残念ながら全く古びない題材、生徒のいじめと自殺という事件に、向き合うと云うより向き合わない親たちの物語。長い歴史のあるキリスト教名門私立の女子校で親やあるいは祖母も通っていたという設定はもしかしたら伝統ゆえに縛られていたかもしれないけれど、伝統ゆえに立ち直れるかも知れないという一筋の希望を感じさせます。

同窓会の会長、教師夫婦、帰国子女のシングルマザーだがやり手、やっとの思いでねじ込むように入学した生徒だったり、あるいは祖父母が来ていたり。それぞれのグラデーション。親たちみなが自分の子供が罪を犯したと納得したうえで会いに出て行ったあとの終幕、教師夫婦が残るシーンが初演にあったか記憶がおぼろだけれど、「これから裁判がある」とむしろ身構えるのは教師という立場ゆえにこの後に起こりうることの過酷さを知っているからこそ。だから向き合うのか、それとも逃げ続けるのかは明確には示されないけれど、ひとたび脱落して叩かれる側になれば再チャレンジが困難だといういじめの構図が、実は親たちがこれから直面するこの国の人々の在り方の映し鏡になっているのだと今さらに気付いて、絶望するワタシなのです。

老夫婦(祖父母)を演じた猪股俊明と羽場睦子の実直できちんと育ってきたというかつての日本の矜恃(という感じ方もこれはこれで一歩間違えば危ないのだけれど)の体現。教師夫婦を演じた佐藤誠・森内美由紀のなべげん鉄板の二人、夫の振り幅目一杯の豹変する感じの凄さ、しかし力強く生き抜く妻の心強さ。同窓会長を演じた山村崇子の傍若無人ともいえるある種のヒール感としての迫力。新聞配達店店長を演じた三上陽永のまっすぐな、しかしどこか後ろ暗さを持ってそうな造型。

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