【芝居】「イン・ザ・ナイトプール」コンプソンズ
2022.4.9 14:00 [CoRich]
120分。王子小劇場。初見の劇団です。座付きの作家が書かない、という4連作。
公演で酔っ払って倒れている男、見ている女。その友人の女と久しぶりに出会う。離れていた地元に母親の看病のため戻ってきていた。一緒に戻ってきた恋人は治安が悪いと女の地元を見下している。「ホットライン」(脚本・演出 宝保里実)
花見をしている幼なじみのイノセントな男女。あるいは女に告白したい男。男が告白しようとしたら、互いの「好きです」が4人全部ベクトルがバラバラで。「confession」(脚本・演出 細井じゅん)
荒川線の車内、乗ってきた男が無賃乗車を咎められ、男を刺す。未来から来た女は男を助けようとするが、失敗が続き、この場面をずっとループしている。「走光」(脚本・演出 鈴木啓佑)
行方不明の座付き作家・金子は激昂して炊飯器に封印されているという。封印を解くために劇団員たちはアラスカへ向かう。「東京」(脚本・演出 大宮二郎)
「ナイトプール」というキーワードを含む共通点をもちつつ、雰囲気はずいぶん異なる4本。初見の劇団なのでコンプソンズらしさはわからないけれど、さまざまな芝居がぎゅっと2時間の楽しさ。
「ホットライン」は。地元にずっと居る女と地元に居づらくなり離れた女の10年ぶり、夜の公園での偶然の再会を軸とした会話劇。10年ぶりに訪れてもぼんやりした町に仕方なく戻ってきた女、連れ帰ってきた恋人もなんか冴えない感じなの含めてのいろいろ負け帰ってきた感じ。 久々の再会の二人が友だちというか共依存という雰囲気で続く会話の不穏さが持ち味。酔っ払って寝ている男と、地元にずっと居る女も近所の単なる顔見知り以上の何かを感じさせてここにもまた何かの共依存が。蹴られて反撃しようとした酔っ払い、反撃された彼氏が呼んだ警察が連れて行くのが彼氏というのも、この地元の雰囲気を匂わせつつ、物語の区切りとしても巧い。地元に居る女を演じた宝保里実の内気そうに見えて実はなんか強い感じ、地元に戻ってきた女を演じた星野花菜里のややヤンキー感の対比が印象的。
「confession」(告白)は、ガムを呑まない方がいいと注意し合ったりというあまりにイノセントなカップルと、恋人になりたい男と告白される女のバラバラのベクトルの告白に至る序盤という物語の世界をあっという間に作る初速の凄さ。会話してるはずなのに、かみ合わないこのバラバラが、全員がボケ突っ込みを重ねて会話で物語を紡ぐのではなく、空気感を醸し出すだけという力技の思い切りのすごさよ。短編だからこそ成立するという感はあるけれど、巧いなぁと思うのです。イノセントな女を演じた忽那文香がともかく目を引く静かなズレっぷりが凄い。
「走光」は、タイムリープの繰り返しというSF風味。ある問題を解決するために未来からやってくる設定じたいは枚挙に暇が無いほど多くの物語が創られていて、それを無限に繰り返すというのもそう珍しいわけではないけれど、サウンドクラウド(という音楽サイト)しか存在しなくなった未来でそこに残っていた、有名人でもなんでもない作曲者を救うために、別に何でも無い未来の人物が救いに来るというカジュアルな感じがちょっと面白い。曲を聴いて踊る女の姿はそれに重なり合ってちょっとセンチメンタルな感じで。同じシーンを繰り返すことで「人々の気持ちが劣化していく」といういう視点を持ち込み、それゆえに人を刺すことを諦めてしまうというループの終了になるのがちょっと面白い。その中で運転手と車掌がダブル不倫してるという話は明らかに巻き込まれたサイドストーリーなんだけど、こちらはループを抜けた先に修羅場があるということでそれもちょっと面白く。
「東京」は今回表には出てこない作家を探す劇団員たち、封印を解くために裏カジノで儲けアラスカにと言った具合にドキュメンタリーと銘打った、破天荒でデタラメな物語。いちばん大事な思い出を消すことで封印が解かれるという仕掛けで語られる、劇団員との友情だったり、温泉旅行の思い出とか。学生時代の一夜の夜遊び(の象徴としてのナイトプール)、卒業後も続いてきた悪ふざけという語り口。解散を謳うけれど、まあ次回公演も載ってるから、逆にこれは続けることの覚悟を宣言という雰囲気。
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