【芝居】「未明の世界」GHOST NOTE THEATER
2022.4.23 15:00 [CoRich]
ギャラリーを舞台に小川未明の童話のリーディングにすこし動きを付け、生演奏を付けて上演。60分。4月23日までスペース&ギャラリー弥平。
北の海に住む人魚は人間の生活に憧れ、子供だけは人間のもとで生活させたいと陸に産み落とす。子供の居ない老夫婦がその人魚を拾い神からの授け物だと思い育てることにする。成長した人魚は老夫婦が商う蝋燭に絵を描き、それを持った船乗りは災難に遭わないという噂が立ち大人気となる。それを聞きつけた香具師は老夫婦を説得し、人魚を連れ去ってしまう。「赤い蝋燭と人魚」
(青空文庫)
金儲けの上手な男は、不幸を訴える物に金を恵むようになると、つぎつぎと押し寄せるようになり、キリがないと考えてきっぱりと金を恵むのを止める。世間からの非難を浴びるようになった男は町を逃げ出して船に乗り、人の勧めで静かで平穏な町にたどりつく。「船でついた町」
(青空文庫)
寒い冬の夜、星たちが地上をみつめている。貧しい親子の家で寝ている子供は夢を見ている。夜明けが近づいているころ、子供たちが起きて親の手伝い、働き始める。「ある夜の星たちの話」
(青空文庫)
不勉強にして知らなかった小説家・童話作家の小川未明の三編をリーディング。特徴として挙げられるらしい人が死んだり、町が滅びたりといった少しばかり不穏な物語もあったりしてなかなかハードな短編。
「〜人魚」は信心深い老夫婦が人魚を育てるがしかし、目先の金に目がくらみやがては町が滅ぶほど人が居なくなるという物語。子供の頃に聞いたらかなり印象に残るだろうなぁと思うワタシ。蝋燭の明かり、波の音を思わせる道具を使い、ゆったりと語るリーディングで生まれる静かな空間で語られる物語の奥行き。
「〜町」は都会の何事も競争になる雰囲気と対比して、のんびりした平穏な町は開けてないからこうなのだ、というのは少々牧歌的に過ぎる感はあるし、都会の上流階級ゆえのバイアスめいた視線を感じたりもするけれど、すこしばかりの悪意どころか、むしろ持ちあげる気持ちでこういう物語を描いていた時代なんだなぁと思ったりもします。
「ある夜〜」は夜中から夜明けまでの時間、空の星からの視線で寝ている町が少しずつ動き始める時間帯をズームアップしたり、引きの画で見たりを繰り返して描く物語。特定の教訓めいたことというよりは少しばかりの感想を挟みつつ、あくまで天からの視点で情景を淡々と描く、もっとも映像っぽく感じる一編。
家からはわりと近所のギャラリー。晴れた日に散歩がてらにふらりと訪れるのはちょっと嬉しい時間だったりもします。
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