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2022.05.04

【芝居】「夜ふかしする人々」戯曲本舗P

2022.4.16 19:00 [CoRich]

戯曲のブラッシュアップを目指す創作団体の企画公演。夜の人々という共通軸の短編三本。 4月18日まで小劇場メルシアーク神楽坂。100分。

毎晩団地を見つめる見慣れない男に管理人の男が声をかける。浮気調査に来ているのだという。以前団地に住んでいたが女と別れてから旅に出ていて時々ここに戻ってくる男も居合わせて。「浮遊している、俺ら」(水中散歩 / 美崎理恵)
吹きさらしの荒野の夜。寝袋のような袋を傍らに置いた女。友と待ち合わせるためやってきた男、杖に導かれ道を探してやってきた女。「アンフォルム」(戯曲本舗 / サカイリユリカ)
通夜、通夜振る舞いも片付き静かになった祭壇を前に故人の娘が親と話をする。「機種変更」(Sky Theater PROJECT / 四方田直樹)

「浮游している〜」はあんまりパッとしない中年男たちの、過去の繋がりとパッとしない今の自分語りというフォーマット。別れを経験したりしてそれなりに酸いも甘いも重ねた男たち。引きこもっていた過去から人から必要とされることに喜びを感じる、というのはたとえばサラリーマン定年後の設定でも通用しそうな幅があります。あるいは旅をし続けている男というのは無頼なカッコイイ男の感じ。探偵の男は時に詩的に「夜を味方にして」というベースをさりげなく折り込んであって、これが終盤、夜の「さまざま」が見えているということに繋がっていて、短編の物語として綺麗な着地点に至るのが巧い。

「アンフォルム」は物語の設定も人物たちの造型も相当にハードコアでなかなか手強い感じ。「人骨の入った寝袋に寄り添う女」はなかなかに受け入れづらい主人公ではあるのだけれど、やってきた二人との会話のなかで浮かび上がるのは、生まれたときに傍らにあった人骨がたったひとつの他人との繋がりのよすがで、それを他人から母だと言って貰えれば信じられるかもしれないという支え。二人が去った後に支えを失ってしまうようでなかなか終幕までハードな一本。

「機種変更」、いい話に見える(けれどまあ芝居としてはどこにでもありそうな)通夜の親子の穏やかな会話という序盤から中盤にかけてくるりとひっくり返すのがとても見事。その後の理不尽とも言える親子の会話の応酬は時にパワーゲーム、時にドタバタコメディ、時にすれ違いまくりの疲弊するような会話だけれど、とても見応えのあるパワフルさでぐいぐいと引っ張ります。心ない言葉がぐさりと刺さったりもしつつ、しかし亡くなった家族のことを想う夜の歩み寄りに至る終盤のソフトランディング。終演後のトークショーによれば、終幕の「おつかれさま」はそこから更に数年後のもう一人の親を亡くした後の一言とのことなのだけれど、その前と時間も空間もひと繋がりになってる感じがしてやや判りづらく感じるワタシですが、なるほど巧い。

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