【芝居】「怖え劇」劇団スポーツ
2022.3.19 14:00 [CoRich]
劇団スポーツ(1)の新作。 110分、王子小劇場。3月21日まで。
劇団の稽古場、ゴーストレストランを舞台にした芝居の稽古。若手ふたりにとっては初めての新作、休んでいた劇団員も久しぶりに復帰している。ややパワハラ気味の店長、行き違いが重なり配達員に土下座を要求するという場面、若い女優はどうしてもその場面ができず、作演は強く当たる。
芝居の稽古に没入するあまり、役者の認知が歪んでいく感じ。役者のバイト先なのか、劇中劇の稽古の稽古場なのかの線引きが曖昧に描かれている序盤はそのような役者側から見えている線引きの曖昧さを感じさせます。稽古場で壁とする場所をことさらに強調したりするのも堆肥となって面白い。
中盤に至り劇中劇とされる場面で不幸な行き違いが重なり配達員に誠意という名の土下座を強要するゴーストレストランの店長、という場面。それを演じる役者がどうしても演じられないことで作演が考えずに従えと言い放ち圧力をかけることが重なります。稽古場の方はさらに、告発によって上演がなくなることを恐れた役者たちが、ときに前よりは丸くなったとか、自分たちも経験してきたということで事なかれに隠蔽するという場面は、客席全体をも気まずく、恐怖に陥れるのです。
映画や芸能の現場で近年とみに告発されるようになってきた昨今、ワタシが芝居の題材としてみるのは初めてな気がします(本数が減っているので、単に見逃しているからかもしれませんが)。その場に居合わせることの恐怖とそれを隠蔽することが暴力を振るう側とおなじだということを鋭く突きつけ感じさせるのです。
その後に続く本番のシーン。件の土下座の場面にいたり、若い不器用な男の役者は突如アドリブでガパオライスを作り、他の役者もスタッフをも巻き込んで桜吹雪のなかで大団円に向かいます。止めようとする作演は芝居の第四の壁に阻まれ入れずしかし花見に向かうシーンに至り作演もかつての日を思い出すのです。なんか力技でのハッピーエンドではあるけれど、その前の稽古場のシーンが二重構造で辛かっただけに桜の舞うベタなシーンが逆に効果的に前向きな気持ちになるのです。
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