【芝居】「ジャバウォック」肋骨蜜柑同好会
2022.3.5 15:00 [CoRich]
肋骨蜜柑同好会の新作は、怪獣被害をめぐる人々に透け見える現在に相似のファンタジー。110分。3月6日まで楽園。
突然現れた大きな鳥のような怪獣。異臭を放ち、ある程度の距離に近づいた人は異臭が感染する。それ以上の被害も死者も出ていないが、正体も生態も掴めないまま二年が経っていた。異臭の感染は時間が経つとなくなる症状が多数だが、たった一人、最初の目撃者で感染した女はこの二年異臭から回復しないまま入院療養をしている。
市役所の職員たち、小説家になりたい記録する若い男、神社の娘、実体がわからない縦割り行政の隙間に鳥獣駆除業者として入り込もうとするヤクザたち、感染者の女が大家として持っていた家に住んだ元大学教授、研究者をめぐる物語。
異臭対策のマスクと突然現れ、制御のしかたがわからない恐怖の対象の怪鳥。序盤で描かれるのはその混乱が二年続き新しいノーマルが日常となった日々で、コロナ禍の現在を重ね合わせるよう。怪しげな科学者や利権を狙うヤクザの登場はどこか俗っぽい日常の延長の雰囲気をまといます。
中盤で現れる「常世(とこよ)の設計図を書き換える」ことによって現れる怪物というSFめいた設定もまたメッセンジャーRNAの延長線上のように思われるけれど、徐々にそれは一人の孤独な男が一人の女に思い入れた結果だというファンタジーがぐんぐんと現れます。 獣害対策の役人の女の家に伝わる矢じり、ヤクザの娘が弓を放つという神事で雲散霧消する怪物と孤独な男の切なさ。それまでバラバラに見えていた人々が奇跡のように繋がっていく終盤はゴジラのようでやけにカタルシスがあったりするのです。
怪しげな科学者を演じたフジタタイセイは怪しさ満点で物語に説得力。ヤクザの娘を演じた永田佑衣は神事を担う凛とした説得力。役所の室長を演じた吉田覚は困らせられる人の良さ満点。研究所研究員を演じた安東信助もまた怪しいのだけれど、膨大なセリフが物量で説得力。
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