« 【芝居】「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」theater 045 syndicate | トップページ | 【芝居】「そして、死んでくれ」M2 »

2021.11.07

【芝居】「暫しのおやすみ」競泳水着

2021.10.2 19:00 [CoRich]

劇団競泳水着の新作。105分。10月10日まで駅前劇場。

売れているアイドルは週刊誌の不倫報道でバッシングを受け姉夫婦の家に身を寄せる。このときに新人だった女優も10年が経って売れていたが、敏腕マネージャーが新人を連れて独立することを聞かされていなかったことにショックを受ける。

信頼していたスタッフに裏切られたと感じること、不倫報道のバッシングという違いはあれど「暫しのおやすみ」を通り抜けた二人を軸に描きます。自分自身が商品で所属する事務所が変わっていくという芸能界固有の話ではあるのだけれど、描かれるのは女優たちだけではありません。もう少し上の世代の女性という形で描かれるマネージャーや、女優の姉夫婦も女優たちと同じように(別の軸の)挫折と経験をするのです。マネージャーは子供を授からないことの反動で育成に入れあげ(そう感じたワタシ、個人の感想に過ぎないのだけど、作家の意図はちょっと聞きたい気はする)、離婚して仕事に生きる日々で新たに見出した才能で独立を考えたり。あるいは女優の姉夫婦は子供を作ることに積極的にならなかったがためにすれ違う日々から、妊娠し関係が変化したり。まるでショーケースのように、仕事と生活を選び取る人々のさまざまが並ぶのです。

10年を超える時間軸をわりとあっさり描く物語、若い女性の顔の判別が怪しくなりつつあるワタシには少々ついていきづらいところがあったりもするのだけど、あくまでデフォルメしたりはせずに自然体で洗練されたテレビドラマのような雰囲気のパッケージは確かに敷居は低いのだろうと思うのです。若い女性ばかりになりがちなのは、まあこの作家というか劇団のカラーというご愛嬌。 引きこもっているという役なのに圧巻の存在感の鮎川桃果はプライベートをのぞき見るようで楽しく、この座組、唯一きちんとワタシが個体認識できる(情けない)川村紗也はこのポジションを造型できるようになった時間の流れを感じて。スタイリストを演じた今治ゆかは軽妙な語り口で時に語り部、あるいは狂言回しだったりもして舞台のリズムを刻むのです。天才新人女優を演じた竹田百花、ちょっと面倒くさい雰囲気も含めてイマドキの新人という説得力。

ワタシから観ればみんな「若い女性」という一括りになってしまうそれほど広い年代ではない人々、こうやって書き出して見るとその歳で求められ人々に受け入れられる「女優という商品」のグラデーションを高い解像度で細やかに描き出そうという作家のある種の執念が滲むような一本なのです。

|

« 【芝居】「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」theater 045 syndicate | トップページ | 【芝居】「そして、死んでくれ」M2 »

演劇・芝居」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【芝居】「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」theater 045 syndicate | トップページ | 【芝居】「そして、死んでくれ」M2 »