【芝居】「丘の上、ねむのき産婦人科(A)」DULL-COLORED POP
2021.8.21 18:00 [CoRich]
ダルカラの新作は子供を産むことについてカップル達の物語の短編で巡る120分。元々の性別によって演じられる(A)と男女を入れ替える(B)で。ワタシは(A)を。8月29日までスズナリ。そのあと大阪。配信は9/26日まで。
地方の町の産婦人科の待合室に集う人々、それぞれの物語。
19歳のカップル、町を出たい女、収入が十分ではない二人は産むかどうかを迷う。
大手企業の管理職の妻と家事を担う夫。妊娠でもギリギリまで働きしかし、子供のことも心配で。
大企業の部長である夫、二回り以上年下の専業主婦。ファミレスに集う友達たちとオンラインでお茶会を。体調は悪く家事もできないことを負い目に感じていて。
飲食の男、プログラマの女。結婚するかどうするかをずっと議論する。こんな時代に子供を産むか、ブライダルチェックを受けたりもする。
コロナ禍の中、共働き会社員の夫婦ふたりとも在宅勤務の日々。出かけたい気持ちを語り合う。子供を産んだらどこに出かけられるだろう。
45歳の医者の妻と作家の夫。不妊治療の日々、タイムリミットに焦る、人工授精を決める。
1971年、工場で働く夫。妻は親戚からの妊娠の圧力、妊娠すれば粉ミルクや帝王切開をよしとしない圧力が更に。
19歳から45歳までさまざまな年齢、さまざまな属性の男女を妊娠や出産という断面で描く事で今の日本で妊娠が、あるいは女性が社会の中でどういう状態になっているかを誠実に描きます。若者は収入に不安がある現状から抜け出そうとしても妊娠がそれを阻むことになったり、バリバリと働く女性が出産して仕事を離れると舐められるという強迫観念だったり、専業主婦という立場で何一つ不安がないように見えても、自分を殺して生きていくことの辛さだったり、今この時代に子供を産むことがいいのかと考えることだったり、子供が居ると行動が子供中心になっていくことのちょっと寂しい気持ちだったり、子供を望んでいてもそうならなかった焦りだったり。
更には過去の日本での夫婦の姿を描くことで、実は今も亡くなっていない母親に対する同調圧力、お腹を痛めた出産や、いわゆる母乳神話だったりという根深く変わらない今を描くのがとてもいいのです。更には最後の場面ではどんな年齢でも男女を問わずでも子供を授かることができるようになる未来を希望として描くのです。現在のさまざまを面として描き、過去と未来を直交させて描くことで何倍にも厚みを感じるのです 。
ワタシは(A)を観たけれど、男女入れ替えた(B)ならばもっといい意味で誇張しデフォルメされてメッセージが強くなるような気がします。いわゆるダブルキャストでステージ数を稼ぐのはあんまり好きじゃないワタシですが、これは両方観るべきだったと後悔したりするのです。(まあ配信観ればいいんだけど)
いわゆるバリキャリを演じた湯船すぴか、序盤で妊娠する姿すら仕事にしてしまう貪欲なしかしクールビューティな感じがとてもよく合っていて。体調がすぐれない専業主婦を演じた大内彩花のゆるふわ服から突如全く印象の違う服へのダイナミックな変化と格好良さ。不妊治療する夫婦を演じた木下祐子・塚越健一の穏やかなしかしキリキリと高まる感情を持つ妻と見守る夫は夫婦こうありたい、というよさ。
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