【芝居】「湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。」KAAT神奈川芸術劇場
2021.8.28 17:30 [CoRich]
新たな芸術監督を迎え今年度より導入されたシーズン制の最初のテーマは「冒」の幕開け。 130分、9月12日までKAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ。ちなみに、読みは「みなとよこはま・あらぶるいぬのさけび、しんそう、さんにんきちざ」
横浜の小さなホテル。出入りするヤクザと悪徳警官たち三人。みなとみらい地区で行われた博覧会で悪徳警官とヤクザが作った五億円の行方がわからなくなって数年後。警官は息子も警察官になり、昇進を控えてあの時のことを精算したいと考えている。三人の誰かが持っている筈なのだけど、行方は解らない。
三人吉三は2014年に観ていて、そのときもかなり複雑な物語と感じていたワタシです。横浜生まれの作家・野木萌葱、まあ何かと評判の悪い神奈川県警のヤクザっぽさとヤクザ、そして大金が動いたであろう横浜博という枠組みで物語を組み立てます。元々の三人吉三では「三人の吉三」が差し違えることが終幕となる物語だけれど、今作ではさらにその親たち(ヤクザと悪徳警官)という二階建てに。差し違える親の世代と舟に乗りこの小さな世界を抜け出す若者たち、そして親の悪行を引き継ぐ舎弟たちという終幕は、終わる過去があっても閉塞が続く今、しかし開ける未来を望むように感じるアタシです。
ホテル・鯨楼を舞台にして、町のことを清濁併せて知り尽くす年老いたマスターと、メイド姿で撃たれても生き返る「ヒトガタ」の存在は、この小さな世界を観ている二人の視点は、年老いて何もかも知っている視点と、生まれ変わるたびに新たに学習していく若い視点の対比になっていて、親子の物語の相似形にも見えたりするのです。
正直言えば、無料で配役を知る術がないのは劇場を背負う演目なのにあまりにけち臭いし、初見の俳優の名前を知る術を奪うという意味で俳優にも失礼に思います。紙を配るのがリスクだというなら、終演後に壁に貼るなり、劇場のwebページに記せば良いだけのこと。有償のパンフは見応えあれど、これも配役表が一箇所になっておらず、あまりに見づらいのです。
【追記】というわけで、配役表を勝手に記します。
9/8昼時点では、パンフ売り場の隣に配役表を貼りだしていたとのコメントを頂きました。ワタシが気付かなかっただけ、かもしれません。
- 悪徳刑事たち
- 玉城裕規 (柄沢純/和尚吉三) 息子 キャリア警察官
- 渡辺哲 (柄沢正次) 父 地元横浜の所轄警察官
- 筑波竜一(新井淳史) 中堅の所轄警察官 警官を辞めてまっとうになろうとする
- 切れ者ヤクザたち
- 岡本玲 (弁財瞳/お嬢吉三) 娘 売人の元締め 晶を売人として雇う
- 山本亨 (弁財三郎) 父 切れ者ヤクザ
- 若杉宏二 (奈良郷統介) 舎弟 跡継ぎになろうとするが娘が跡を継ぐと知り裏切るか
- 不器用なヤクザたち
- 森優作 (矢部野晶/お坊吉三) 息子 札幌からやってきた。やはり不器用
- ラサール石井 (矢部野光男) 父 不器用ヤクザ
- 伊藤公一(竹野克哉) 舎弟 なかなかうまくいかない
- まわりの人々
- 村岡希美(行山由香子) 晶・瞳の母親
- 大久保鷹(人形師) ホテル・鯨楼を経営
- 那須凜 (ひとがた) 撃たれても生き返る
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