【芝居】「さがしものはなんですか〜光合成クラブⅢ」菅間馬鈴薯堂
2021.7.10 15:00 [CoRich]
公園などに夜に集まる男女を描く短編で構成される光合成クラブというシリーズ。Ⅲとタイトルがありますが、当日パンフではⅡの再演に近い、との記載あり。88分。上野ストアハウス。劇団サイトには全公演の戯曲が公開されています。
夜な夜な公園の電灯の下に集まる男女たち。ビールケースなどを持ちだして酒を呑んだり、世の中のことを愚痴ったり、ダンスをしたり、近況報告したり、それぞれの生活を見続けていたり。あるいは近所の生活保護の若い男に目をかけていたり。前にどこかであった葬式帰りの格好の男は、この女たちとの宴が忘れられずに探している。
決して豊かではない市井の人々、家族があるのかないのかもよくわからない人々、夜の公園の片隅の酒宴を行っている人々の生活を描く短編集。たとえばスーパーで見かけた割引シールのパンを一つ買う若い女、スーパーの精算機に戸惑う年寄りの姿、やっとの思いでついたビル清掃の仕事、それなりなサラリーマンだった男の妄想のような恋心や夕日な風景、離れた故郷に思いを馳せる人といった風景を点描します。
あるいは歌やダンス、果ては舞い踊り、という感じの馬鹿騒ぎ、まさに宴での語りと賑やかさのよう。ストリートというにはあまりに人間くさく格好良さの欠片すらない地面を這いつくばるような生活をする人々の姿に地続きなのです。
葬式帰りの男に纏わる話は、点描と云うよりはもう少し物語。かつて友人の葬式帰りに宴に参加した男、三年が経ちいろいろものを亡くし、恋人の四十九日に再びこの宴に加わる、時間の長い流れを感じさせるのです。
三人の女性を演じた稲川実代子、舘智子、シゲキマナミの丁々発止、ダンスなども楽しい。宴に一人加わっている男を演じた村田与志行は中年男の悲哀を煮詰めたようで、しかも時々妙なテンションの楽しさ。街の歌い手という男二人を演じた大間剛志、津田タカシゲは道化のように賑やかで芝居っぽさの振り幅。生活保護を受ける男を演じた市川敬太は素直な人物という造型をきちんと。葬式男を演じた西山竜一の実直な、時間をぎゅっと濃縮し内包するような人物、女の前で虚勢を張らず泣く男が高い解像度でとてもよいのです。
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