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2021.06.06

【芝居】「アルビオン」青年座

2021.5.29 14:00 [CoRich]

マイク・バーレットの2017年上演作を青年座が上演。5月30日まで俳優座劇場。休憩10分を挟んで170分。

子供の頃憧れた英国式庭園の屋敷を買い取った成功した女。ロンドンを引き払いセミリタイアを目論んで移り住んで来た。荒れた庭園の再生に打ち込む。それまで村の広場として使われていた庭に他人が入ることを嫌い憧れた通りの庭園を作りたいと考えている。息子はテロにより亡くなっていて、娘は一緒に引っ越してくる。

裕福な夫婦と大人になりつつある娘、小説家の叔母、これまで屋敷で働いていた家政婦と庭師の夫婦や出入りするようになって庭師の修行を積む男、亡くなった息子の恋人、移民の若い家政婦、隣の家のひとびとで物語を運びます。当日パンフレットによれば、「アルビオン(ALBION)」はグレートブリテン島の古い呼び方で、英国や英国人の異称なのだそう。なるほど、英国という国の姿を造型しようという意気込み。

かつての美しい庭を再生したいという思いが、かつて美しくあった国を取り戻したい、という気持ちに重なるように物語を駆動します。さらにはその庭を独占し他人を入れたくないという閉鎖的な振る舞い。それは例えば移民と言うとちょっと身構える感じ、あるいは娘と叔母の同性愛を許さない姿勢はやや頑固に過ぎるものだけれど、人間も国家も年を重ねればそうなっていくものだと言うことのような気もするのです。

あるいは老いた夫婦の存在はもちろん敬うけれど、、やや邪険にすることだったり、若い世代が大学に進むために多くの借金を抱える現実、一方で裕福な家族は次の世代も階層にとどまれると言う分断など、何もかもがイギリスの、あるいは寛容ではなくなった多くの国の姿を写し鏡のように造型するのです。これだけの情報を詰め込見つつ、きちんと人々のドラマになっていると言う二重構造になっていることに気づいてびっくりするワタシです。すばらしい。

寛容であり続ける夫を演じた山野史人の穏やかな雰囲気はまさに英国の紳士という風情。やや頑固な妻を演じた津田真澄はパワフルに生きて財をなしてきてこれから自分の理想を作り上げようとするのに周囲との乖離に気づくという絶望を受け止めるしっかりした女を。叔母を演じた小林さやかは理性的な人物を、しかし娘を演じた那須凛と互いに愛し合ってしまうという戸惑い、しかし強い意志を持った人物を繊細に。 -->

アルビオン
アルビオン
2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)
会場:俳優座劇場(東京都)
出演:名取幸政、山野史人、青木鉄仁、前田聖太、鹿野宗健、五味多恵子、津田真澄、小林さやか、安藤瞳、世奈、那須凜
脚本:マイク・バートレット
演出:伊藤大

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2021.06.05

【芝居】「おのまさしあたあ ひとり寄席 其の一」おのまさしあたあ

2021.5.28 19:30 [CoRich]

一人芝居のシリーズ、いつもと趣向を変えて短編二つで構成。休憩込み60分。5月30日までベイサイドスタジオ。

一人暮らしのご隠居は人使いが荒く使用人が居つかない。それを承知でやってきた新しい使用人は黙々と仕事をこなし三年が経ったが、主人が近くの怪物がでると噂される洋館に引っ越すと聞き、怖がって暇をもらってしまう。引っ越しも終わり、一人のご隠居、夜中になりぞくぞくっとすると、牙の鋭い男が現れたので、早速用事を言いつけこき使う。翌日はつぎはぎだらけの大男が、三日目は月夜に獣に変身する男が現れるが、同じようにこき使う。「怪物使い」
神と悪魔が、学者の老人をたぶらかせばという賭けをする。老人の前に現れた悪魔は、死後の魂の交換のかわりに現世のあらゆる快楽と悲哀を味わわせるという交換条件をのみ、世界の王にする。700ページの長編を30分にぎゅっと圧縮し「ファウスト」ならぬ「ファースト」

落語「化け物使い」に着想した「怪物使い」は引越し先を洋館に、もとは一つ目、大入道、のっぺらぼうと代わる代わる現れる化け物を、ドラキュラ、フランケン、狼男に置き換えて、牙だったり喋れなかったり、月夜のことだったりとリメイク。もともとの落語では三匹の化け物は一匹のタヌキが化けていて「化け物使いが荒い」というオチなのだけど、今作で最後に現れるのはキャップをかぶり黄色い髪の子供、つまりあのキャラクタ。一人が化けているわけではないけれど、リーダーというか保護者的立場だから出てきたってことかしら。まあ置き換えの面白さ。

落語風に着物姿で高座にあがるけれど、いわゆる「上下を切る」喋り方はあまりなくて、ちょっとめずらしい感じ。題材の特性なのかもしれないけど。口調はもともとの役者自体がどこか噺家という雰囲気の喋りでもあるので、違和感はびっくりするほどなくて。

「ファースト」はギュッと圧縮して、といいながら、世界の王はつまり世界のホームラン王・王貞治になる、つまり「ファースト王」が多重に掛詞になる面白さ。ホームラン王になりつつも、その価値を感じ取れない男が世界記録の前日にデットボールというフィクションを巧みに混ぜることで、難病の子供の約束で打席にたち、世界記録を打ち立てるという、どこかでみたような感動物語をあえて混ぜて、ホームランを打つ瞬間を「時間よ止まれ」の一言で「ファウスト」に回収するのが見事なのです。

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