【芝居】「Smells Like Milky Skin」MCR
2021.5.15 18:00 [CoRich]
当初5/8〜5/16の公演予定が12日初日に短縮。100分。スズナリ。
子供を三歳で亡くして二年経った夫婦。妻はまだそのダメージから抜けられない。夫は一歩を踏み出そうとしている。ある日、近所の子供がおっさんに成長した息子を連れてくる。別の「闇の世界から来た」という息子を周囲は戸惑うが、妻はすぐに受け入れ、夫はぎこちないながらも徐々に受け入れる中、実は二度目の死が近づいている。
単に悲嘆に暮れるだけの夫婦なはずだったのに、おじさんになってはいても、息子が戻ってくることで変化するのです。終盤で父親と一杯呑んだりはしながらも息子を息子と心からは思えてない。妻は心の底から息子と思っている。終盤でその種明かしはあるけれど、もしかしたら現実に見えていても二人の親の子供の距離であり得る話、とも思うのです。 二度目の死を迎えて息子が去ってしまったあとに残された二人にあからさまになる深い溝。セックスレスなどのすれ違いで流れ続けていたものが一気に吹き出す終幕近くに凄みがあるのです。これはハッピーエンドには見えないけれど、収まるべき所に収まっていく人々の物語なのです。終盤少し前、親子を取り戻そうと親子三人のキャッチボール、ぎこちなくてもその形を作ろうという想いの静かな迫力に泣けてしまうワタシなのです。
夫婦を軸にして、周囲の人々も描写も無駄とも思えるほど繊細だったりコミカルだったりエキセントリックだったり。たとえば、タバコ部屋の男たちの何気ない会話のキャッチボールの楽しさ、その中で言い出せないことがあるという雰囲気だったり、あるいは彼らが呑み屋で女に声をかけるがエキセントリックに過ぎて立ち向かえない強者だったというコミカルだったり。あるいは姉夫婦の恥ずかしげも無いほどの愛し愛されな感じとか。
夫婦を演じた佐賀モトキも奥田洋平も高い解像度で細やかに積み重ねるのです。息子を演じた川島潤哉は、あきらかにオッサンなのに時に可愛らしい瞬間があったりするのも楽しいのです。
今回は自由席でQRコードから座った座席を登録するというシステム。デジタルパンフレットはあとから感想を書いたりする立場としては有り難い。紙の他にあるのが嬉しいけど。
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