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2021.04.21

【芝居】「Let's split」 スクランブル

2021.4.16 19:15 [CoRich]

4/18まで神奈川県立青少年センタースタジオ「HIKARI」。90分。これから、配信も予定されています。

ボーリング場のオーナーとなった男。知り合いが集まってくる。一人一億で雇われた犯罪者たち。リーダーが分け前を配り解散となる瞬間、一人が支払われていない経費を払って欲しい、と言い出す。

ボーリング場、客席側に向かってレーンが中央に一本。舞台奥にはバーカウンターやジュークボックスという凝った舞台。最初に登場する「オーナー」は開業前に最初の一投をを投げようとして派手にころび、ボウルから指が抜けなくなる幕開け。三々五々集まる人々はそれぞれに癖があってそれはそれぞれの職人的なこだわりや矜恃がある人々、しかし彼らはチームとして犯罪の実行者として雇われ、多額の報酬を得るために集まってきたことが判ります。

一人一人の登場に時間がかかるけれど、そのうちの一人が計上されてない経費を払って欲しいと云いだしてからが物語の本編。武器調達、打ち合わせの場所代、ハッキングのための買い取ったPC、はてはボスの二人が再婚するからお祝いを、という感じでそれぞれが自分の取り分を「公平に」欲しいという混乱、その中で若い女性に一目惚れしてしまったからとは言えずに、その両親が払う分を肩代わりしたりと、カオス状態に。

冷静に俯瞰して考えれば、大量の要素で混乱してるけれど、本当の決着点とか物語の幹によって語られる話があるわけではありません。とはいえ、大量の情報を洪水のように浴びせられる空間に漂うワタシはわりと楽しく時間を過ごすのです。なるほど彼らのモットーとして掲げられる「最高の暇つぶし」に、まんまとハマるのです。

ボーリング場のオーナーを演じた中根道治はコミカルで困り続ける人物をきちんと。終幕で再びボールを投げる、というシーンもいいのです。

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2021.04.19

【芝居】「誰かの町」タテヨコ企画

2021.3.28 14:00 [CoRich]

ソーントン・ワイルダーの「わが町」をモチーフに現在の日本に置き換えた130分。3月28日まで小劇場B1。予定されていた大阪公演はキャンセルに。

役者の地元でその育った街を取材することで劇作に役立てようと劇作家と役者が地方都市を訪れる。 新聞記者の息子として地元で育ち、向かいのクリニックには同い年の娘が住んでいる。

もととなった「わが町」はストレートな上演は実は観たことがなくて、幾つか日本に翻案したものを観ています(「わが町・池袋」(平田オリザ、あるいは横浜を舞台にした小鳥クロックワークなど)どちらもあまり寂れた町ではない都会を設定したために雰囲気がずいぶん違うけれど、今作はベッドタウン的な「バスの終点が新幹線の駅」というほどほどの地方を想定していてそういう意味では原作に近いのかも知れません。「日常生活」「恋愛と結婚」「死」の三幕構成なのも原作通り。

地元を出て、その土地を久しぶりに訪れた役者(西山竜一)とその先輩の劇作家(舘智子)の二人の会話で語られる語り口はリズムがよく、コミカルさもあって楽しい工夫。テレビでハワイ旅行が当たったり、ママさんバレーの大会のコミュニティ、同級生たちが集まるのはその同級生の家が営むラーメン屋など、絶妙に時代と場所を描きます。進学のため、あるいはなし得たい仕事のために地元を離れることも東京からほど近い地方、という感じによく合っています。

積木のような少し大きな木製のブロックを組みあわせながら場所を作り上げていくのは積木のようで、どこかファンタジーの雰囲気を纏い、物語の中、という世界を効果的に表すのです。

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2021.04.14

【芝居】「アン」やみ・あがりシアター

2021.03.27 17:00 [CoRich]

役者のオーダーに沿う形で一人芝居を作り上げる「オーダーメイド」と題した企画公演。70分。3月28日まで王子スタジオ1。

増毛剤の発明で大金持ちとなった若い女。余命が一年ほど難病と妊娠が同時にわかる。生まれてくる女のために何もかも揃えておこうと考える、個人所有の島で暮らし、おもちゃ会社、学校、友達となる子供を持つ住人たちなどを揃えて何不自由なく暮らせるように整えていこうと考える。

いくつか縛りがあって、一人芝居、1時間ほど、役者の手による人形劇と紙芝居のシーンをそれぞれ入る、となっています。

海外ドラマ風に少し誇張した喋り、いわゆる第三の壁に向かっての語りをいれた体裁。妊娠を知り父親候補には逃げられても莫大な資産で子供のためにいろいろ揃える前半はコミカルに楽しく。時に子供が思うように育たなかったりして悩む未来を描く中盤は彼女にはやってこない未来で、しかしその想いはより深く描かれます。資産を全て秘書に奪い取られてしまってからの展開。かつての幼なじみに引き取られるのはどこか安堵する気持ちもあるけれど、ところどころで顔を見せる赤毛なアンの姿は、あれ、もしかしてこれは孤児院に引き取られる、あのおさげ髪の「アン」の物語にゆるやかに繋がる別の世界線の物語なのか、という不穏さを感じるワタシです。

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2021.04.05

【芝居】「岬のマヨイガ」いわてアートサポートセンター・宮古市民文化会館

2021.3.20 18:00 [CoRich]

岩手の作家、柏葉幸子による児童文学をserial number(ex.風琴工房)の詩森ろばが脚本・演出。宮古、盛岡、二戸、久慈の岩手を巡演して東京芸術劇場・シアターウェスト。3月21日まで。130分。amazonでは試し読みで序盤や背景が読めたりします。

事故で両親を失い声を発せられなくなった少女、夫の暴力から逃げてきた女、老人ホームに入ろうと遠野からやってきた老女。その日、大きな地震が起こり、避難所で出逢う。老女が家族だと機転を利かせ、三人で岬にある古民家で暮らすことにする。地震の影響は封じ込められていた魔物を呼び起こしたことに気付いた老女は、遠野から河童を呼び寄せ、調べることにする。

元々は子供向けに書かれた物語で、他人どうしの3世代の女性たちが被災をきっかけに肩寄せ合い暮らすようになる中、河童たちと出会い、土地に封じ込められていた魔物が出現する中、対決するのです。魔物は直接人を傷つけるというよりは人々の心に忍び寄り、不安と恐怖を煽るのだということも、河童たちの描かれ方もファンタジー。もちろんきちんと物語は物語として描かれるのだけれど、リズムや河童の異形のありかたが、それを支える一人の手による生演奏と相まって一種の祭りをみているような感覚になるのです。

ワタシが観た回は、序盤の地震が語られるシーンで劇場が揺れ、照明も長い時間の揺れ。物語とリンクする巡り合わせを感じるのです。

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