【芝居】「今はやることじゃない」箱庭円舞曲
2020.12.29 14:00 [CoRich]
箱庭円舞曲、作演を兼ねる主宰の育休明け、劇団旗揚げ20周年と題しての久々の公演。80分。12月30日まで駅前劇場。
妻が入院したあと夫がひとりで切り盛りするラーメン屋。同じ味の筈なのに客が入らなくなって久しい。娘は思春期の頃から家のラーメンが嫌いになって素っ気ない。回りはマンション建設のために立ち退きが相次いでいて、持ち家のこの店にも不動産業者が訪れている。
ある日、担当者が口にしたラーメンにひどく感動し、口コミサイトなどを総動員して客足が戻ってくる。
作家自身もマニアックに好きな、まさにラーメン屋にまつわる物語。客が付いている店は必ずしも美味しいラーメンが理由とは限らないという視点から客あたりのいいおかみさんの存在だったり、流行の味付けであったり、あるいは口コミサイト総動員で作られた情報により押し寄せる一元客だったり。加えて、真面目にスープをとることをやめ、無化調どころか化学調味料とスープ缶詰だけで作り上げた味でも変わらない客であったり。さらには居抜きで、しかし味は全く受け継がないでリニューアルする娘など多面的な切り口で「ラーメン屋」という存在を描き出します。「ラーメンは情報を食べてる」というのはどこかの漫画の台詞ですが、そんな現状も織り込むような軽快な語り口も楽しい。
「ラーメン屋」を描いている本作だけれど、劇団の周年公演というタイミングで、劇団員だけによる上演という形態から、それはもしかしたら「劇団」というものさまざまな在り方や観客とのありかたを写し絵として描くよう。
ラーメン屋のカウンターをわざわざ内側を客席にむけて置き、大量の什器を仕込んで描く舞台が印象的。作家のラーメンへの想いの深さか、あるいは内側で考え続けている様々なことが凝縮しているかなんてことを思いつつ。
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