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2021.01.11

【芝居】「今はやることじゃない」箱庭円舞曲

2020.12.29 14:00 [CoRich]

箱庭円舞曲、作演を兼ねる主宰の育休明け、劇団旗揚げ20周年と題しての久々の公演。80分。12月30日まで駅前劇場。

妻が入院したあと夫がひとりで切り盛りするラーメン屋。同じ味の筈なのに客が入らなくなって久しい。娘は思春期の頃から家のラーメンが嫌いになって素っ気ない。回りはマンション建設のために立ち退きが相次いでいて、持ち家のこの店にも不動産業者が訪れている。
ある日、担当者が口にしたラーメンにひどく感動し、口コミサイトなどを総動員して客足が戻ってくる。

作家自身もマニアックに好きな、まさにラーメン屋にまつわる物語。客が付いている店は必ずしも美味しいラーメンが理由とは限らないという視点から客あたりのいいおかみさんの存在だったり、流行の味付けであったり、あるいは口コミサイト総動員で作られた情報により押し寄せる一元客だったり。加えて、真面目にスープをとることをやめ、無化調どころか化学調味料とスープ缶詰だけで作り上げた味でも変わらない客であったり。さらには居抜きで、しかし味は全く受け継がないでリニューアルする娘など多面的な切り口で「ラーメン屋」という存在を描き出します。「ラーメンは情報を食べてる」というのはどこかの漫画の台詞ですが、そんな現状も織り込むような軽快な語り口も楽しい。

「ラーメン屋」を描いている本作だけれど、劇団の周年公演というタイミングで、劇団員だけによる上演という形態から、それはもしかしたら「劇団」というものさまざまな在り方や観客とのありかたを写し絵として描くよう。

ラーメン屋のカウンターをわざわざ内側を客席にむけて置き、大量の什器を仕込んで描く舞台が印象的。作家のラーメンへの想いの深さか、あるいは内側で考え続けている様々なことが凝縮しているかなんてことを思いつつ。

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2021.01.10

【芝居】「オレステスとピュラデス」KAAT神奈川芸術劇場

2020.12.6 15:00 [CoRich]

杉原邦生演出のギリシャ悲劇シリーズ、瀬戸山美咲の台本での上演。12月13日までKAAT神奈川芸術劇場、大劇場。130分。

母殺しの男(オレステス)は復讐の女神たちの呪いから解放されようと、神託に従い従兄弟(ピュラデス)、救われる場所へ人々を率いて遠くタウリケへ向かう旅に出る。
従兄弟の父親に旅の金の無心をし、奴隷船の男色の船主から逃げ、泳ぎ着いた島で出逢った盗賊や少女、ギリシア軍に滅ぼされた村で復興に人生を捧げるギリシア人との出会いなどの旅を経て。

ギリシャの物語に隙間を見つけて、作家が想像した物語を紛れ込ませる趣向。ずっと旅をする人々に次々と出逢う人々を大鶴義丹、趣里という二人の役者でというのも面白い。奥行きもタッパもある巨大な劇場空間を自在に使い、遠近感、高さにビックリする感じなど、二階席から観ても楽しそうなのです。

作家が紛れ込ませた物語は、戦争のあと酷い目にあったり残された人々を目撃する旅というテーマに思います。戦争では敵を殺すことが正義だったけれど、終幕では、初めて生きている「人」を殺してしまったと実感する(殺された少女は神がどこかに飛ばしたというのも救いの物語かも知れません)成長の物語なのです。

時にラップ、時に歌い上げる音楽も印象的。個人的にはTCアルプの武居卓がきっちり謳い上げのを観て嬉しくなったりもするのですw。

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