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2020.10.20

【芝居】「All My Sons」serial number

2020.10.3 19:00 [CoRich]

serial numberの役者、田島亮が2011年に演じた同じ役で出演。私は初見の戯曲です。シアタートラム。席は千鳥に一つおき、入場時のアルコール消毒など。11日まで。 155分(休憩10分)

戦争、行方不明の兄、弟は復員。父は工場を持ち裕福に暮らしている。 兄の帰りを待つ母は諦め切れない。兄の恋人に心惹かれた弟は、家に呼び結婚を申し込む。恋人はそれを承諾する。 父は戦闘機の部品不良で一度は逮捕されたが釈放された。同じ罪で服役している男は、この婚約者の父親なのだ。 なんとなくうすうす感じてるが問いただすことができない家族のタブー。婚約者の登場とそのつながりによってそのタブーは揺さぶられ、徐々に明るみになっていく事実。たんにその事実が明るみに出ただけではなくて、その人々の想いや、あるいは互いの関係すらも壊しそうになりつつも、物語の着地はどうなったかまでは明るみにしませんが、ハッピーエンドではない雰囲気の幕切れなのです。

アーサー・ミラーの初期の戯曲で、日本では「みんな我が子」というタイトル(なるほど)で、新劇のスタイルでの上演が多いよう。seriau number(もしくは風琴工房)としては建て込まれた舞台はアメリカ郊外の一軒家という穏やかな雰囲気だけれど、家の2階の壁には大きな黒い穴、庭には滑走路を思わせるマーキングなどの不穏な要素も織り込まれています。近所の人々にしても、開業医なのに研究者を目指したい夫とそれを阻止したい妻など、それぞれの家族が隠していることが物語世界の奥行きを感じさせます。

親の世代と子の世代の正義の捉え方の違い、それぞれのコントラストも面白いのです。後半は物語の要素がどんどん繋がり高い密度で組み上げられるおもしろさなのだけれど、前半は言い淀むように物語の進行が遅く感じるところもあったりも。なるほど「初期の」傑作と呼ばれるのもわかるのです。

母親を演じた神野三鈴は隠してきたこと、これまでの人生の重さをきっちりと。息子を演じた田島亮の無垢で真摯な人物の造形もとても良くて。

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