【芝居】「バロック」鵺的
2020.3.7 14:30 [CoRich]
120分。スズナリ。
近親相姦の家族の血を絶とうと姉が火を放った洋館。一人生き残った妹は結婚し洋館を再建し4人の子供をもうけたのは家族を絶とうとした姉への意地だった。長男は母親の姉を恋人だと思い続けている。長女はヒステリックで次男と惹かれ合い、次女は冷静で家から離れなければと思っている。三男は亡くなった姉が拾ってきた子、家には住んでいた人々の想いがこびりつき、洋館は再建したが、養子で入った父親がこの家を離れようと決め、長く廃墟のままだったが、死を目前に生き残った妻が解体に同意し、やっと解体にこぎつけた。一晩だけこの家で全員で過ごそうと提案する。
家族の「血」を絶とうとする姉と家族と家に拘る妹、小劇場らしからぬ重厚な洋館を舞台に、濃密で光の対比を効果的に使うコントラストの物語。特に序盤、照明がともかく暗く逆光のシーンが多いのは重厚な雰囲気を纏います。ワタシには見慣れた役者のカンパニーだからあまり違和感感じないけれど、正直に云えば、序盤で誰が誰やらという感じになってしまうのは、見やすさという点でやや難を感じるワタシです。だれでもない人々の作り出す空気感、ということなのしら。
物語が進むにつれ全員で揃うわけではなく、何人かに分断された「クラスタ」の会話が連続して起こる中盤。とりわけ嵐の雷鳴とともに、「並行してある別の空間」というレイヤーに落ち込んでしまった人々という分断が起こり、あるいはこの不穏な物語の全ての起点である姉が挑発して登場人物達が自ら死を選んだりもする物語の絶望感は、鵺的節というか作家の高木登節というか。
この絶望の物語の中、軽口を叩く男二人、佐藤誓と白坂英晃はコントラストとリズムを作り出していて、ワタシは見やすさの点で随分救われる思い、軽く見えてちゃんと造型された人物をつくりだす役者の力も確かに。鵺的での福永マリカはどうしてもこういう感じの怖さが先立つ役が多くなりがちだけれど、裏を返せばこの座組でのはまり役ということか。外部から現れる男を演じた、吉村公佑はこの家を支配するのとは別の不穏さの象徴でエキセントリックさをしっかりと。
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