【芝居】「人人(NIN-NIN)」くによし組
2020.2.29 14:00 [CoRich]
95分。王子小劇場。この週まで開催され次の演目から中止となった佐藤佐吉演劇祭2020の二週目。
山奥の学校、生徒は忍者のような出で立ちと口調をしている。他の学校が統合され、生徒たちが転校してくる。互いの違和感や人見知り、最初は仲違いしているが、やがて惹かれあったり、なじんでくる。教師の一人が産休に入り、代理で卒業生がスタッフとして加わる。自分が受けた「治療」をここの生徒たちにも受けさせようとする。
ニンニンという口癖、忍者の学校というコミカルな体裁の序盤。物語が少し進むと、特別支援学校でコミュニケーションに困難を抱える生徒たちなのだということが明かされます。転校してくる生徒たちは忍者口調がなかったりもう少し「普通」だけれど、性自認やある種の粗暴さなど、違う種類の困難を抱えているのです。
教師たちもまた、恋人を事故で半ば失った教師が脳のデータを移植したという石に依存していたり、産休に入った女性も羊水検査で先天性の問題を抱えることがわかるに至りそれまでの何もかもありのままがいいと思っていたそれまでとは考え方がぐるりと変わったりと何かを抱えているのです。
卒業生が持ち込んだ「治療」は外にいって戻ってくると、アフロ姿でイケイケな意識高い系になってきます。世間から見れば「普通」の「リア充」な雰囲気だけどそれまでの人物とは全く違ってしまうのです。
小さな願いを持ち素朴で静かに暮らしているそれまでの暮らしが一変しマッチョな人格になることはやや批判的な目で描かれてはいるけれど、いっぽうでまた、「こんな場所」で一生を暮らすのか、親もいつか亡くなる日が来ること、あるいは「普通に」生きたいと思うことの願望もまた真実なのです。コミュニケーションがうまく取れないことなどの困難さはそのまま受け入れられるべきという綺麗ごと。
瀕死となった一人もまた、車椅子に乗せられた脳だけの機械として「治療」されるのです。一人は残っているものの、みなが「治療」された状態で演じられる「みにくいアヒルの子」はいっけんうまく上演されるけれど、もやもやとした気持ちを残すのです。
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