【芝居】「コタン虐殺」流山児★事務所
2020.2.1 19:00 [CoRich]
過去の2つの時代と現在を行き来しながらアイヌをめぐる物語、上演でさまざまな困難を克服して千秋楽まで走りきった詩森ろばの一作。 130分、スズナリ。
1669年アイヌの部族の対立の中、松前藩に武器貸与を求めた帰路の病死を和人による毒殺と誤報されアイヌは武装蜂起したがそれまでの対立などから分断され、松前藩有利のなか、更に和睦の宴で指導者がたちが謀殺されアイヌは松前藩への服従を余儀なくされていく。
1974年、アイヌ民族の集落で観光アイヌを目玉にしていた町の町長が、アイヌ革命に感化されたの和人の活動家が町長を刺殺する。
シャクシャインの戦いと白老町長襲撃事件というアイヌを巡る二つの事件と、現代のススキノのキャバレーという三つの時代を行き来して語られる物語。絶望的な状況が次々と起こる物語ですが、立体的に組まれた舞台を自在に動き回る人々の軽やかな動きと、主にキャバレーシーンを中心とした踊りや歌を多用した賑やかなシーンを組みあわせ、テンポ良く、底抜けな明るさすら感じさせる雰囲気でアイヌと和人の背景を含めてきちんと描き出す物語。不勉強にもどちらの事件も知らなかったワタシ、ちょっと恥ずかしい。
アイヌと松前藩の因縁ともいえる悲惨な歴史、排他することや差別することという根底の感情が虐殺をしてもいいという心根につながるという前半。しかし、その後の時代ではアイヌと関係ない男が(可哀想に思った)アイヌを(自分に投影して)独立させる気持ちに共感して、殺人を犯すという格差が生む不幸の輪廻。観光アイヌにまつわるセリフが実に切実で、「差別をやめれば、アイヌを名乗ることができて、自分の意思で観光のために踊るということも自分のプライドを守ることができる」が心にズシンと響くのです。
殺人を犯した男が後年、朝日新聞阪神支局襲撃の容疑者に浮かんだ男だという事実。革命を叫ぶ左から反日を排除する右へ転向すること、自分と違う意見を許さない狭窄な人物なのもまた、孤独を感じている切実なのです。
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