【芝居】「だけど涙が出ちゃう」渡辺源四郎商店
2020.1.23 19:30 [CoRich]
交互上演している「どんとゆけ」で死刑囚との結婚を続ける女が高校生の頃の前日譚となる構成の新作。80分。青森のあと、アゴラで26日まで。そのあと香川。
犯罪の被害者が死刑囚の死刑執行を行う制度もとつれてこられたのはがん治療の名医と呼ばれた男で、乳がんの女の安楽死に加担したとして死刑が確定した。執行員として呼ばれたのは女の夫で、妻のことが忘れられず死刑囚が許せない。女の妹は死刑囚の医師を追うように青森にやってきていて、姉が乳がんと知り治療のため紹介した。
「どんとゆけ」では死刑執行員制度という現代の仇討ともいう少々トリッキーな制度を描き、死刑囚とばかり結婚する女というややホラーのテイストと、その制度の中のドタバタした感じを描きました。
前日譚となる今作はおなじトリッキーな設定のもと、尊厳死をめぐる人々に三角関係や不倫を絡ませて、より情欲を感じさせる物語になっていて、少々テイストは異なります。設定を遊んでいる感のある「どんとゆけ」に比べ、そのプラットホームの上で、ガン患者を自宅で介護している中で愛情ゆえの、尊厳死で、それが家族の意にそぐわなかったという不幸。社会派的な視点はたとえば女性の検事が少ないことなど他の視点も入ってくるのです。
犬が死んだことを表現するシーンがあるのだけれど、意図的にミスリードを誘うような感じで、妻を亡くしたことを嘆き悲しんだ過去の夫の姿を見せるよう。回想シーンといえばそうなのだけど、時空を飛ばさず重ね合わせるのはスムーズで巧い。
このシリーズでホラーテイストを醸し出す「獄中結婚マニアの女」は今作では高校生。その後の彼女がどうしてそうなったかを具体的に描いてはいないけれど、死刑執行のその場に居合わせた強烈な体験が愛する人が目の前で殺されることに執着してしまうようになったという描き方にも見えるのです。
妻の死を悼む夫を演じた畑澤聖悟は、これだけ長いセリフの役は久々。時に軽薄にも見えるけれど、頑固さも娘や妻への愛情も併せ持った説得力のある造型。医師を演じた各務立基はごく静かでおだやかな人物を細やかに作り出します。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「ハッピーバースデー」劇団チリ(2025.07.10)
- 【芝居】「即興の穴」劇団チリ(2025.07.10)
- 【芝居】「ザ・ヒューマンズ ─人間たち」新国立劇場(2025.07.08)
- 【芝居】「いつだって窓際であたしたち」ロロ(2025.07.07)
- 【芝居】「骨と肉」JACROW(2025.07.05)
コメント