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2020.02.29

【イベント】「無い光」(月いちリーディング 2020/2)劇作家協会

2020.2.22 17:00 [CoRich]

2010年のプロトタイプと、 2011年に単独の初演作のブラッシュアップ。若葉町ウォーフ。

終演後のディスカッション、作家は90年代の「完全自殺マニュアル」が流行った時代の空気感を丸ごと感じて欲しいのだといいいます。 あの時代感を、作家と同じように感じるには、同じ世代でもクラスターによるし、世代が違っていても共感できるかもしれない、というちょっとふわふわした感じはあります。高度経済成長の時代の誰もが同じ映画を見て、高視聴率のテレビ番組を見て、ヒット商品をみんなが買い、ヒットチューンをみんなが知っている、という時代からは変わってしまったあの時代を明確に造形して普遍的なものに昇華していくには要素をどう作り出すかが難しい時代ではあるのです。

死に近づくことがカジュアルになった時代の雰囲気、自殺で見えないが事故などで臨死体験で見える光。それは何かの希望のようでもあるのです。それまで露悪的なシーンも多かった作家だけれど、2010年のプロトタイプ(役者も良かった)で、鴻上尚史の「トランス」からのインスピレーションを受けて高校生の頃の屋上のあの空間の懐かしさを抱え込んで大人になったところに作家が共鳴したのだろう、ということを再確認するのです。

わりとあの時代の感覚を観客全員が持っているという前提で書いていたのだなということを改めて感じるけれど、MUのあらゆる上演でセルフライナーノーツで細やかに説明される当日パンフがあって、知らなくてもそこで読んだことを検索したり調べたりして追体験するということもするようになった時代です。観客がその時代の何かを知っていなくても、観客はちゃんとその時代を感じるという力はもっと信じてほしいとも思うワタシです。

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【芝居】「戯れゴト」route.©︎

2020.2.21 20:00 [CoRich]

王子小劇場の演劇祭・佐藤佐吉演劇祭2020のオープニング。ワタシは初見の劇団です。70分。23日まで王子スタジオ1。

中学二年生の少女、人魚姫が好きで泡と消えるけど王子様は刺してしまいそう。放課後だけの友だちは奔放で自由。ある日二人はずっと一緒にいて、変化して。

役者は五人ですが物語を担うのは女子中学生を演じる二人。甘いの好きとそうでもない、いじめにあっている、など属性はあるものの、二人がとめどなく他愛ない会話が延々と続きます。さえずるようでもあり、眩しくもあって。

後半、古いラブホテルに入り、赤いドレスに着替えて飛び降りる一人、残されたいじめられていた一人はむしろ表情を失い、周りからの扱いが優しくなり、日常を取り戻したかに思われた瞬間に堰を切ったように涙があふれるのです。

ここに至って、前半、やや長く退屈に見えていた日常の二人の時間がもう取り戻せない時間だったことに思い至るのです。慈しむあの時間、ワタシにもあったかな、と思ったり、思わなかったり。

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2020.02.27

【芝居】「寒がる寒がり」あひるなんちゃら

2020.2.16 18:00 [CoRich]

75分。OFF OFFシアター。19日まで。

父親が住む実家が火事になった。娘は家を出ていたが、実家をアトリエにして絵を描いていたが、火事でこれまでの絵を全部失ってしまった。 娘の勤める喫茶店にこっそり泊まり込む父親だが、オーナーに見つかる前に妹が父親を引き取ることにする。火事に遭った女を友人たちは慰めるために喫茶店を訪れたり、アルバイトの女を慕って後輩の女たちが入り浸りライトノベルの妄想が捗ったりしている。

家が燃えた父親と娘を物語の軸に、それまで描いていた絵を失うことをきっかけに絵を辞めてすっきりしたい気持ちも。 父親もまた、娘たちが大好きでちょっと疎まれながらも飄々とした雰囲気なのに、「住む」ということがどういうことかわからなくなって、人生の迷子になった感じ。平穏で穏やかに暮らしていた二人に火事をきっかけとしてしかし大騒ぎすることなく変わっていくこと。いっぽうで、かつての48色鉛筆を買って貰う約束が守られなかったことの拘りもあったりして。

周りの人々もさまざま。同情するあまり過剰に泣きそうになってみたり、恋を妄想して毎日遅刻するアルバイトに後輩達も想像の翼が開きすぎてていろいろ捗ったり。 失敗を取り戻したいオーナーは時間を戻すことは出来なかったけれど、進めるワザを手に入れるシーン、単に間を省略するだけでシーンが先に進んでいるだけなのだけど、観客は既に知っている隕石のことが知らされなかったり、ハワイに行った筈なのにその記憶がないなど、巻き込まれるもう一人を置くことで格段に面白くなっているのです。

喫茶店に3つしか椅子がないと指摘する父親に「見えてないようだけど、説明したくなかったけど、こっちにテーブルも椅子も広がってる」というシーンがちょっと好き。観客の想像力に喫茶店の広さを委ねるのもまた演劇らしい楽しさなのです。

劇団員以外の常連の役者をほとんど使わず、ほぼ初顔合わせとなった座組。丁々発止のリズム感という店では常連に一歩譲る感はあってちょっと流れはゆっくりめ。それでも、台詞と実は緻密な間はまさに「あひる節」で役者が変わってもブレない強さがあるのです。

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【芝居】「東京ノート(インターナショナルバージョン)」青年団

2020.2.9 18:00 [CoRich]

再演( 1, 2, 3, 4, 5) を重ねる劇団のマスターピース。様々な国で上演されたものをくるりと包むように、様々な人々の物語に昇華。115分。 吉祥寺シアター。

字幕用に舞台上にモニタを設置、二組以上の会話の時はモニタの上下に分けてという様々な工夫をしていて、これはこれで同時多発の可視化みたいな感じでスリリングな体験。

どの人も思いのほかどれも都合良く(勉強してたとかなんとか)外国語がわかる設定になっていて、日本に来る外国人がごく普通になり、英語に限らずさまざまな外国語を互いに知ることが当たり前になっているコスモポリタン化が進んでいるという近未来。そのおかげで、実際のところオリジナルの東京ノートから物語として大きく変化したという気はしません。 じつのところ、言葉が判らないゆえに起こるギャップによる化学変化をこっそり期待していたワタシにはちょっと肩透かしな感じがしたのは事実ですが、違和感ない物語の仕上がりになっているのです。

東京ノートのオリジナルの時代は(今作に限らずですが)携帯電話がないゆえのすれ違いが会話を生んでいる側面はあるのですが、今作ではデジカメ、スマホなどの現代風のアップデートされた物は登場していて、部分的に使われていたりはするものの、たとえば家族の待ち合わせの会話の中にほとんど携帯が登場しないなどちょっと無理が起きている感は否めません。まあ、それほど大きな違和感に感じないというのはたいしたもの、なのですが。

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2020.02.20

【芝居】「コタン虐殺」流山児★事務所

2020.2.1 19:00 [CoRich]

過去の2つの時代と現在を行き来しながらアイヌをめぐる物語、上演でさまざまな困難を克服して千秋楽まで走りきった詩森ろばの一作。 130分、スズナリ。

1669年アイヌの部族の対立の中、松前藩に武器貸与を求めた帰路の病死を和人による毒殺と誤報されアイヌは武装蜂起したがそれまでの対立などから分断され、松前藩有利のなか、更に和睦の宴で指導者がたちが謀殺されアイヌは松前藩への服従を余儀なくされていく。
1974年、アイヌ民族の集落で観光アイヌを目玉にしていた町の町長が、アイヌ革命に感化されたの和人の活動家が町長を刺殺する。

シャクシャインの戦い白老町長襲撃事件というアイヌを巡る二つの事件と、現代のススキノのキャバレーという三つの時代を行き来して語られる物語。絶望的な状況が次々と起こる物語ですが、立体的に組まれた舞台を自在に動き回る人々の軽やかな動きと、主にキャバレーシーンを中心とした踊りや歌を多用した賑やかなシーンを組みあわせ、テンポ良く、底抜けな明るさすら感じさせる雰囲気でアイヌと和人の背景を含めてきちんと描き出す物語。不勉強にもどちらの事件も知らなかったワタシ、ちょっと恥ずかしい。

アイヌと松前藩の因縁ともいえる悲惨な歴史、排他することや差別することという根底の感情が虐殺をしてもいいという心根につながるという前半。しかし、その後の時代ではアイヌと関係ない男が(可哀想に思った)アイヌを(自分に投影して)独立させる気持ちに共感して、殺人を犯すという格差が生む不幸の輪廻。観光アイヌにまつわるセリフが実に切実で、「差別をやめれば、アイヌを名乗ることができて、自分の意思で観光のために踊るということも自分のプライドを守ることができる」が心にズシンと響くのです。

殺人を犯した男が後年、朝日新聞阪神支局襲撃の容疑者に浮かんだ男だという事実。革命を叫ぶ左から反日を排除する右へ転向すること、自分と違う意見を許さない狭窄な人物なのもまた、孤独を感じている切実なのです。

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2020.02.13

【芝居】「それは秘密です」チャリT企画

2020.1.29 14:00 [CoRich]

2014年初演作をパワーアップして再演。 100分。座・高円寺。

2014年のあのときは、国の防衛の形を決めるという大義名分が少なくともあって、それを実現するために多少の無理も押し切りたい政府。それは 機密の保護を謳いつつ、内実は都合の悪いことを隠したい権力の都合を支えるものになるからだということ。そんな怖さを持つ特定秘密保護法成立の危うさを描いた物語でした。国会もまだ一応議論らしきものは出来ていて、その上でそんな危なっかしい法案を通したい国の怖さが際立っていたのです。

再演の物語はあまりかわりません。逮捕理由を告げずに尋問という不自然さもそのままです。保護法の危うさもそのままだけれど、大幅に劣化したのは大義名分すらどこへやら、無理を通すというところだけが精鋭化しズタボロにされた言論の府の変わり果てた姿。あのころよりも遥かにどうでもいいことを国が守ろうとするようになった5年半、私たちは何やってたんだ、と絶望的な気持ちになるのです。

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2020.02.10

【芝居】「どんとゆけ」渡辺源四郎商店

2020.1.26 13:00 [CoRich]

死刑執行員制度という架空の制度と死刑囚との結婚を繰り返す女をめぐる、三演となる劇団のマスターピース( 1, 2)。 78分。

物語はホラー風味に少しばかりの荒唐無稽さを併せ持つ物語。再演を重ねるうちに役者が入れ替わりレパートリー・シアターのような風合いを持つようになってきています。とりわけ獄中結婚の女を初演・再演と演じた工藤由佳子から、青森中央高校OG・小川ひかるの客演に代わったことは印象を大きく変えています。年齢が若くなったことで情念のようなものは薄れたかわりに、若いみそらでこういうことになってしまったホラー感が強まったと感じるワタシです。他にも刑務官を演じた三上陽永も実力派の客演で物語をコミカルに彩るリズムを作り出すバランスの変化を感じます。再演に続き被害者の父を演じた田中耕一も年齢を重ねたある種の軽さがあって、とりわけ津軽独特のトランプゲーム・ゴニンカン (wikipedia)のシーンが変わらずとてもいい。 一方で、被害者の妻を演じた木村知子や死刑囚を演じた工藤和嵯など劇団の若い世代がキャストになっていて、次の世代の座組を印象に残すのです。

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【イベント】「消失点」(月いちリーディング 2020/1)劇作家協会

2020.1.25 17:00 [CoRich]

月いちリーディング、JACROWの2015年上演作のブラッシュアップ。座高円寺けいこ場、本編120分+ディスカッション60分ほど。

子供を置き去りにして亡くした母子家庭の母親、取り調べにあたる刑事もまた息子との二人暮らし子育てに悩み時にネグレクトにならないかという悩みという構造の物語。上演では少しコミカルさを纏っていた気もするのですが、リーディングでは陰鬱さが勝るようで、とりわけ裸足で就学時健診を受けようとする子供の姿が見えるようで、より抑圧的な物語に感じる私です。

5年経っても「ちゃんと」という言葉に追い詰められる親の(とりわけ母親の)扱いは何も変わらないことが厳しい。ディスカッションの中で語られたのは作家自身が子育てをする中で書かれた戯曲だということ。娘を遺棄して目張りまでしてしまうのは確かに残忍だけれど、自分の視野がどんどん狭まっていき、そこに収束してしまうかもしれないという恐れを作家自身が感じていたということの深刻さが、この残忍な「手口」に表出するようなのです。

ブラッシュアップは、 回想シーンの多さが指摘され、作家自身が今ならもっと上手に出来る、という宣言の前向きさ、いろいろなバリエーションの上演も期待するワタシなのです。

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2020.02.06

【芝居】「だけど涙が出ちゃう」渡辺源四郎商店

2020.1.23 19:30 [CoRich]

交互上演している「どんとゆけ」で死刑囚との結婚を続ける女が高校生の頃の前日譚となる構成の新作。80分。青森のあと、アゴラで26日まで。そのあと香川。

犯罪の被害者が死刑囚の死刑執行を行う制度もとつれてこられたのはがん治療の名医と呼ばれた男で、乳がんの女の安楽死に加担したとして死刑が確定した。執行員として呼ばれたのは女の夫で、妻のことが忘れられず死刑囚が許せない。女の妹は死刑囚の医師を追うように青森にやってきていて、姉が乳がんと知り治療のため紹介した。

「どんとゆけ」では死刑執行員制度という現代の仇討ともいう少々トリッキーな制度を描き、死刑囚とばかり結婚する女というややホラーのテイストと、その制度の中のドタバタした感じを描きました。

前日譚となる今作はおなじトリッキーな設定のもと、尊厳死をめぐる人々に三角関係や不倫を絡ませて、より情欲を感じさせる物語になっていて、少々テイストは異なります。設定を遊んでいる感のある「どんとゆけ」に比べ、そのプラットホームの上で、ガン患者を自宅で介護している中で愛情ゆえの、尊厳死で、それが家族の意にそぐわなかったという不幸。社会派的な視点はたとえば女性の検事が少ないことなど他の視点も入ってくるのです。

犬が死んだことを表現するシーンがあるのだけれど、意図的にミスリードを誘うような感じで、妻を亡くしたことを嘆き悲しんだ過去の夫の姿を見せるよう。回想シーンといえばそうなのだけど、時空を飛ばさず重ね合わせるのはスムーズで巧い。

このシリーズでホラーテイストを醸し出す「獄中結婚マニアの女」は今作では高校生。その後の彼女がどうしてそうなったかを具体的に描いてはいないけれど、死刑執行のその場に居合わせた強烈な体験が愛する人が目の前で殺されることに執着してしまうようになったという描き方にも見えるのです。

妻の死を悼む夫を演じた畑澤聖悟は、これだけ長いセリフの役は久々。時に軽薄にも見えるけれど、頑固さも娘や妻への愛情も併せ持った説得力のある造型。医師を演じた各務立基はごく静かでおだやかな人物を細やかに作り出します。

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2020.02.05

【芝居】「Science Fiction's」スクランブル

2020.1.22 19:45 [CoRich]

80分、STスポット。

ハーブカフェ、店長は目の下にクマをつくり時折奇声をあげている、常連の男はその先輩で最近ちょっと魔法が使えるようになって嬉しい。バイトの男は片腕を鎖で巻きそれを放てばなんでもできると言っている。新人バイトの女を追ってきた男は容赦なく、力が強い。ホームレスの男が出入りしている。そこに騎士が刀を振り回し突然現れる。

なるほど、ゾンビ、タイムトラベルやAI的ロボット、宇宙人、何百年も愛を待つ魔女、何かを秘めた男など、SFっぽい登場人物たち。それなのに場所はハーブカフェで、困ったアルバイトや疲れた店長など日常な感じ。SFという前提で突っ込むことはなく、目の前で困ったことを解決しようと頑張り、日常を過ごそうとしています。

バレバレでバラバラにみえる要素なのだけれど、徐々にその背景、たとえば未来から逃げてきたロボットと追うロボット、宇宙人といった要素が物語の中で徐々に示される構造が面白い。かなり無理筋なファンタジー世界の騎士すらも、800年愛を待ち続けている女と恋に落ちるという素敵な話。物語が私達の地続きの何かとか声高に何かを訴えるというわけではないけれど、要素と構造で「遊ぶ」感じで、なるほど、劇団が掲げる「最高の暇つぶし」なるモットーををきちんと体現する魅力なのです。

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