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2020.01.08

【芝居】「佐藤辰海演劇祭(ムシラセ・日本のラジオ・YAX)」guizillen

2019.12.27 19:00 [CoRich]

8団体が参加。30分×3をひとくみとして、組み合わせを替えながらの上演。転換説明込みで120分弱。ワタシはムシラセ・日本のラジオ・YAXの組み合わせの一本のみ。

(上演順)
お笑いで売れた漫才師の一人が若くして死んだ通夜。師匠、ベテラン女芸人、喋らない芸人、グルービーな女子に交じり、同期だが売れていないコンビは自分たちはどうしようかと考える「つやつやのやつ」(ムシラセ)
市役所の待合室で100人以上が待っている。教育が行き届いた時代、誰もが穏やかだが、生活に追われ疲れ切っている。ときおりやってくる職員が番号を告げている「市役所にて」(日本のラジオ)
演劇祭に出演が決まり、賞を狙う劇団の作家は、受験のようにその演劇祭での過去の受賞作を赤本で探すことにする「斉藤和巳演劇祭」(劇団YAX直線)

30分という制限時間はあるが緩く、それでも超過が明確になると(出演してない)主演団体が踊りながら止めに来る、という前説。開場中の説明は実に丁寧(に過ぎるぐらい)です。

ムシラセは王道の安定感。お笑い芸人の(ちょっと撚った)舞台裏のあれこれ。物語の幹になるのは、売れてるのに亡くなった芸人の通夜で芽が出ないままの漫才師が、売れてない先輩芸人や師匠、(いまどきっぽく)鋭い批評をする素人の女性など様々な人々を眺めるうちに次の一歩に希望を見出す、という前向きな物語。コンパクトに纏まっている安心感で、おそらくどのステージでもどの順番でも高い平均点だろうと思っていたら、なるほど最終的には最優秀賞のようです。

日本のラジオは、打って変わってディストピア感。教育が行き届いているがゆえに全体にモノトーン、丸いメガネというファッションが揃っていて、過剰に丁寧な言葉遣いで穏やか、という抑圧された空間。ミッションスクールでもなく、市役所の待合室でしかも役人は実に雑で、整理券で呼び出されるが順にカウントアップしておらず、逆転して、そもそも元の整理券すら正順に発行されていないなど、なにもかもが「壊れている」空間。別役実を思わせる不条理に被せられる外の世界は、更に不条理で、寝られないほど忙しすぎる人々や海外からの居住者は「結婚の更新」を続けないと収容所送り、オリンピックの建設かオリンピックのボランティアに派遣される、みたいなディストピア。今この瞬間を切り取り不条理に仕立てるという確かな力が圧巻の面白さなのです。どう始末をつけるかと思っていたら、この演劇祭のレギュレーションを逆手に取って、カットする主催団体のダンスが出て来るという使えるものはなんでも使う、「工夫」が巧いのです。

YAXは、演劇祭で認められるために順当に「赤本」で過去問研究という枠組みに、マスクをして小難しい芝居に賞が授けられた去年、それは審査員がその小難しさから各々勝手に見出した面白さとはいうけれど、普通の人には何が何やらさっぱりという尺度のわけわからなさを揶揄する前半、後半は一昨年の受賞で銀河と宇宙と白シャツと黒シャツ、少しはわかりやすいけれど、結局のところどちらも彼ら自身は面白いと思っていなくて、ロートルな自分たちらしさで勝負をかける、という物語。実際のところ、前半後半の2つの過去作のある種のわけわからない話を実に真摯に「それっぽく」フェイクに作り上げるところが巧い。そこから自分たちらしさこそ尊重すべきという結論は、面白いかどうかは微妙だけれど、なるほど前向きになっているのです。

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