【芝居】「下山と帰国」くによし組
2019.12.1 16:00 [CoRich]
60分。東中野バニラスタジオ。
学校に行きたがらない兄と妹。兄はあちこちの山の登山、妹は海外を点々としてときどきメールを送ってきている、と思っていたが。
学校にも通えず、一度は山や海外に出ていった兄妹だが、実はある日ふたりとも実家に戻ってきて、部屋や物置に隠れ引きこもる生活を送っている、という構図の物語。父親は「家族よりも大事な物を見つけて」家をでてしまっていて、残された母親は二人の子供が送ってくるメールに従って買い物や日々の面倒をみていて。成長しても母親に寄生する生活をおくる家族はやがて母親が耐えきれず家を出て残された二人が久しぶりに顔を合わせ、しかし外に買い物に出かけることもできない生活能力がない二人の絶望的でしかしどこかコミカルでぎこちない姿の切実さはときに滑稽でもあるのです。
兄妹の他に、受付の女性が兄のかつての恋人だったり、あるいはMCと呼ばれる、おそらくいじめられた男(自殺した兄の友達、しかも妹の方と初めてセックスした相手)という4人の役者によって演じられます。
中年の引きこもりが取り沙汰されるようになった昨今を思い起こさせる題材ではあるけれど、登山と世界旅行にいちどはでかけて、しかし続けていると嘘をついてその実、引きこもっているという構図はおもしろい構図なのです。それは危ういバランスの上に成り立っていて、かんたんに崩れ去るのです。
他人にとっては滑稽な二人だけれど、当事者にとってはまさに生死を賭けた必死。当たり前に生き抜くことができない二人の絶望を、しかしあまり深刻にしすぎない程度のライトさで描く作家のちから。終幕、「ただいま」の言葉ひとつが持つ希望、しかしそれは問題を最終的には何も解決していない、いわば惰性の日々が戻ってくるだけということでもあるのです。
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