【芝居】「フィクション」JACROW
2019.12.7 19:30 [CoRich]
120分。駅前劇場。
オリンピックから3年後、不景気が続いている。
蒲田のプレス工場。業績は悪く社員のリストラが行われる。社員と結婚しているが出て行ったきりの社長の妹が4年ぶりに戻ってくる。
木更津のコンビニ、やめていた深夜営業を復活させようと本部が提案している。ギャングを店主が更生させたアルバイトの頑張りで業績が上向いていて、店主の娘との結婚を考えている。
札幌、旅館を営む父親が無くなり四十九日に集まる親戚。父親の補助で豊洲にイタリア料理店を開いたが、オリンピックのあとは厳しくなっていることは見透かされ、旅館を継がないかと持ちかけられる。
盛り上がったオリンピックの3年後、不景気から脱出できない日本の蒲田、木更津、札幌(+豊洲)という3つの場所を聞き取って上演、という体裁。景気は悪化の一途を辿り生活は悪くなっているけれど必死に生計を立てる方向を探っている人々を描きます。現実を下敷きにしたような雰囲気をまとっているけれど、これはまだ始まってもいないオリンピックの先で私達の生活が更に悪くなっている未来を作家が描いたものを、あえて「フィクション」と名付けているのです。
一つ目は蒲田のプレス工場、不景気ゆえのリストラの標的を在日にというのは蒲田という土地の雰囲気も含めステロタイプともいえますが、それは現実かもしれないという説得力。出ていった社長の娘を待ち続ける社員の男、戻ってきた女には別の子供が居ても、それも含め受け入れるという男は包容力とも不器用とも言える微妙なバランス。
二つ目は木更津のコンビニ、いわゆるストリートギャングの男をバイトとして雇って店主が目をかけ戦力になっている安定系なのに、娘とその元ギャングが恋仲を超え子供ができて結婚となると動揺する店主。深夜営業を止めるかではなくて、止めたのを復活させるかというのも未来っぽい。
三つ目は札幌のバス停。四十九日から帰る次女とパートナーの男、見送るのは教師の長女とバツイチで結婚した男。父親が亡くなり旅館を誰が継ぐかという切実な気持ち。東京の豊洲でレストランをしている二人が継いでくれないかという本音、豊洲の店の客も減りという(あるかもしれない)風景を絶妙に織り交ぜるのです。札幌のマラソンにではホームレスが追いだされ、沿道で亡くなった無縁仏の話もありそうなのです。終幕直前、赤い傘と白いバックで日の丸っぽいのです。
終幕、蒲田のプレス工場に戻ってきた娘の夫は木更津のコンビニ店主の兄で、市役所のついでに二人で訪れる。次は俺(てつ)より強い男(3歳のダイヤ)に会わせるというのはちょっと上手い。
プレス工場で妻の帰りを待っている男を演じた近江谷太朗は実直な中年男の繊細な造型。コンビニ店主を演じた谷仲恵輔はある種の諦観と面倒見の良さの初老の雰囲気が巧い。
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